7 ページ7
.
「...ありがとう」
言わな言わなと思って戻ってきた車の中でやっと出した声は涙でしょぼくれてしまった。
鼻声でほとんど言葉にできたかもわからへん。
気を利かせてくれたのか、すばるくんが合図でも出したのか、運転手さんが車の外に出て行く。
「...あんな良い席」
たぶん特別にお金を払わな入られへんような所なんやと思う。
普通はあんな間近で見れへんやろうから。
「大倉が喜ぶんやったら大したことちゃうわ」
泣くほど好きやとは思ってへんかったけどな、って笑うすばるくんを見て、ハッと思い出す。
先週の土曜日。
あのテレビ番組で特集してるのを見て、つい観に行きたいって言ったんやった。
それでわざわざここまで連れてきてくれたんや。
「...ありがとう。ありがとうすばるくん」
ほんまに嬉しくて、大好きって気持ちでいっぱいになる。
ほんまは人工ものの電飾に興味なんて無かったのき、今日はほんまに感動した。
嬉しさと感動でいっぱいでまた泣きそうになって俯いたら、どんだけ泣くねんってすばるくんに揶揄われる。
「だって...」
「ただよし」
グズグズと鳴る鼻を啜ってる所に、大好きなすばるくんの声。
それだけで僕の身体はすばるくんに支配されてしまったんちゃうかって錯覚するほど、すばるくんの思い通りに動く。
顔を上げたら重なるのは、愛しい彼の唇。
自分には関係ないような世界やと思っとった。
キラキラ輝く電飾が、あんなに心を震わせるなんて、もしかしたら魔法に掛かったのは、ツリーじゃなくて僕なんかも知らん。
そんな魔法に掛かったんやとしたら、きっとそれはすばるくんの仕業。
「...あかんわ」
唇を離して、あとは家でなって意味深な笑顔で笑うすばるくんに、身体が熱くなるのが分かる。
やからさ、すばるくん。
お家に帰ったら、もっともっとあまい魔法を掛けてくれる?
ずっとすばるくんから離れられへんくなるような、溶けてしまうくらい甘い魔法。
まほう END
.
某テーマパークにがっつり影響されました笑
ラジオ番組での大倉さんの発言を聞いても
特別な人と見るイルミネーションはやっぱり違うんじゃないかなと思って書きました。
クリスマスには早いですが少し甘めの冬のお話でした。
.
529人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
神流(プロフ) - 杏奈さん» 一応、『今夜このまま』というタイトルで書かせて頂いておりますが、もしかしたらログインユーザーでないと見つけられないかも知れません...こちらのサイトの決まり上申し訳ないです(泣) (2019年2月26日 16時) (レス) id: eb9eb7727a (このIDを非表示/違反報告)
杏奈(プロフ) - 裏短編集読みたいのにもう長らく見つけられてません(泣) (2019年2月18日 22時) (レス) id: ef58cf710e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:神流 | 作成日時:2018年11月15日 12時