純情わたがしとの付き合い方【赤緑】

お揃いの恋1 ページ1

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大倉side



ずっとずっと、好きやった。


初めて会った日。


真夏の混み合ったバスの中。


目が合った時、身体が熱く火照ったのは、夏の暑さのせいなんかじゃないって、今なら分かる。



だって、季節なんか関係なく、この人が近くに居るだけで、名前を呼ばれるだけで、鼓動が早くなって全身の血液が熱くなるから。


｢おおくら？｣


今だって、そう。


ゆっくり名前を呼ばれて顔を覗き込んでしまったら、煩くて痛い心臓の位置が分かってしまって、もどかしくて恥ずかしくなる。


正直に言って、まさか渋谷さんが僕のことを好きやなんて言ってくれる日が来るなんて思ってもなかった。


今もまだ信じられへんくらい。


また“会社の上司”として会えたことすら、夢なんちゃうかって未だに思ってるし。


これまでのことなんか全部夢で、目の前にいる渋谷さんは僕が作り出した幻想なんやないかって、そう思うことやって少なくない。


｢…ただよし？｣


｢…へっ！？｣


突然渋谷さんの掌が僕の頭に触れて、下の名前で呼ばれて、心臓が止まるんちゃうかってくらいびっくりする。


僕の名前を呼んだ当の本人は、僕のそんな気持ちなんか知らずに、きょとんとしてるけど。


…不意打ちで名前を呼ぶのはやめて欲しい。


この前終電を逃して渋谷さんの家に泊まらせてもらった時も、寝起きで突然下の名前を呼ばれて、赤くなってしまった顔を隠すのに必死やった。


しばらく経っても熱かった頬が、渋谷さんにバレてないとは思われへんけど。


｢ボーッとしとったで？大丈夫か？｣


渋谷さんの問いかけに必死に頭を振って頷いたら、渋谷さんはふっと口角を上げて


｢…ほな帰ろか｣


なんて…そんなん、反則やと思う。



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