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「それよりな」
声のトーンが、ほんのわずかに低くなる。
「夕方、バイクで校内を徘徊してる女がいるって、
校長から苦情が来たんだが?」
その瞬間、空気が一拍止まる。
しかし――
『えー、なにそれ』
麦茶を一口飲み、けろっとした顔で振り返る。
『ウケる』
悪びれるどころか、面白そうに口角を上げる始末。
相澤のこめかみが、ぴくりと動いた。
「……笑い事じゃない」
低く、しかし確実に怒気を含んだ声。
だが声を荒げないのが、相澤流だ。
「雄英は学校だ。しかもヒーロー育成機関。
校内での無断車両使用は――」
『あーはいはい、規則規則』
話の途中で手をひらひら振る。
『でもさ、敷地クソ広いじゃん?
歩くの合理的じゃなくない?』
相澤は目を閉じ、額に手を当てた。
(……こいつは本当に)
「合理性の話をするなら、
まず“校長に目を付けられない”のが最優先だ」
『えー、目立つのそんな悪い?』
ソファの背に寄りかかり、にやっと笑う。
『ヒーロー科だよ?目立ってナンボでしょ』
相澤はゆっくりと目を開け、真っ直ぐ彼女を見る。
眠たげな瞳の奥に、教師としての責任が沈んでいる。
「お前が目立つと、俺の胃が死ぬ」
『……あ、そっち?』
少しだけ目を丸くしてから、くすっと笑う。
『じゃあ次からは、校門出てから乗る』
「“次から”じゃない。今日で終わりだ」
ぴしりと言い切る。
『ちぇー』
不満そうに頬を膨らませるが、完全拒否はしない。
その反応を見て、相澤は小さく息を吐いた。
(……分かっててやってる分、まだマシか)
「あと」
相澤は視線を逸らし、マグカップに手を伸ばす。
「緑谷に個性、見せただろ」
『……』
一瞬だけ、Aの動きが止まる。
『あー……バレてた?』
「俺が見てないと思ったか?」
『さすが担任』
くすっと笑いながらも、その目はどこか柔らかい。
相澤はコーヒーを一口飲み、静かに言う。
「……あいつは、今はそれでいい。だが、深入りはするな」
『分かってる』
即答だった。
『私は“治した”だけ。
それ以上でも以下でもない』
その言葉に、相澤はほんの一瞬だけ、安心したように目を伏せる。
「……ならいい」
沈黙が落ちる。
外では夜の気配が濃くなり始めていた。
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鈴カステラ(プロフ) - Muさん» ご指摘ありがとうございます!直しました! (1月17日 22時) (
レス) id: 4bba896066 (このIDを非表示/違反報告)
Mu - すいません七話でした (1月17日 22時) (
レス) @page7 id: 5ef27b7515 (このIDを非表示/違反報告)
Mu - すみません。八話の最後の当たりリリカになっているんですけど、、 (1月17日 22時) (
レス) @page7 id: 5ef27b7515 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - 神作をありがとうございます!更新待ってます! (1月14日 13時) (
レス) @page28 id: 48c0cfb182 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴カステラ | 作成日時:2026年1月5日 19時


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