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練馬区。

住宅街の一角にひっそりと佇む、古本屋────。

古い木製の看板が軋む音を立て、
店内には紙と埃が混ざった独特の匂いが漂っていた。

棚には背表紙の色も褪せた本が隙間なく並び、
時間だけが取り残されたような静けさが支配している。

「……へくしゅん!」
静寂を破ったのは、店の奥から聞こえた派手なくしゃみだった。

「真澄隊長、風邪ですか?」
カウンター越しに、馨がちらりと視線を上げる。

手にはハサミ。
どう見ても本屋には似つかわしくない道具だ。

「誰か俺の話でもしてんのか?」
真澄は鼻を擦りながら、適当に棚に肘をつく。

くしゃみ一つで、店の空気が少しだけ揺れた。

「それより馨」
真澄は前髪を指で摘まみ、鬱陶しそうに持ち上げる。

「前髪が邪魔だ」
目にかかっているそれを振り払うように言った。

「はいはい、切りますね」

慣れた調子で返事をし、馨はハサミを構える。
刃が小さく光り、ちょき、と試しに鳴らされる。

「どれくらい切ります?」
鏡代わりのガラスに視線を走らせながら、淡々と確認する。

「任せる」
即答だった。一切の迷いもない。

「じゃあ……」
馨は一拍置き、口元に僅かな笑みを浮かべる。

「パッツン前髪に挑戦を」
ハサミが、すっと前髪に近づく。

「キツネみたいなこと言うなしね」

真澄は即座に言葉を被せ、
嫌な記憶でも蘇ったのか、眉をひそめた。

馨は一瞬だけ手を止め、
それから何事もなかったかのように肩をすくめる。

「……冗談ですよ」

ちょき、ちょき、と
ハサミの音だけが、古本屋に静かに響き始めた。

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鈴カステラ(プロフ) - 皆さんコメントありがとうございました!兄弟姉妹設定にします! (12月29日 22時) (レス) id: 4bba896066 (このIDを非表示/違反報告)
ジュラ(プロフ) - いつも読んでいます!!恋愛の方も気になりますが兄妹設定賛成です!!!勝手ながら家族だと思ってましたwww (12月9日 14時) (レス) @page3 id: 849f7886e3 (このIDを非表示/違反報告)
語彙力無し男―チヤ(プロフ) - いつも読んでます!兄妹設定に賛成です! (12月9日 11時) (レス) @page3 id: 4b2018b156 (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - いつも楽しく読んでます!兄弟設定賛成です!1票! (12月9日 10時) (レス) @page3 id: f211d798b5 (このIDを非表示/違反報告)
まー(プロフ) - いつも更新を楽しみにしております。書きやすい方でいいのですが、全くの他人で「親族?!」みたいな展開にキレて猫被れなくなったお口の悪い戦闘狂モードも見てみたいです^ ^今後も更新を楽しみにしております!! (12月9日 6時) (レス) @page3 id: 5b65e3addc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鈴カステラ | 作成日時:2025年11月18日 17時

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