11 ページ11
練馬区。
住宅街の一角にひっそりと佇む、古本屋────。
古い木製の看板が軋む音を立て、
店内には紙と埃が混ざった独特の匂いが漂っていた。
棚には背表紙の色も褪せた本が隙間なく並び、
時間だけが取り残されたような静けさが支配している。
「……へくしゅん!」
静寂を破ったのは、店の奥から聞こえた派手なくしゃみだった。
「真澄隊長、風邪ですか?」
カウンター越しに、馨がちらりと視線を上げる。
手にはハサミ。
どう見ても本屋には似つかわしくない道具だ。
「誰か俺の話でもしてんのか?」
真澄は鼻を擦りながら、適当に棚に肘をつく。
くしゃみ一つで、店の空気が少しだけ揺れた。
「それより馨」
真澄は前髪を指で摘まみ、鬱陶しそうに持ち上げる。
「前髪が邪魔だ」
目にかかっているそれを振り払うように言った。
「はいはい、切りますね」
慣れた調子で返事をし、馨はハサミを構える。
刃が小さく光り、ちょき、と試しに鳴らされる。
「どれくらい切ります?」
鏡代わりのガラスに視線を走らせながら、淡々と確認する。
「任せる」
即答だった。一切の迷いもない。
「じゃあ……」
馨は一拍置き、口元に僅かな笑みを浮かべる。
「パッツン前髪に挑戦を」
ハサミが、すっと前髪に近づく。
「キツネみたいなこと言うなしね」
真澄は即座に言葉を被せ、
嫌な記憶でも蘇ったのか、眉をひそめた。
馨は一瞬だけ手を止め、
それから何事もなかったかのように肩をすくめる。
「……冗談ですよ」
ちょき、ちょき、と
ハサミの音だけが、古本屋に静かに響き始めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 405人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鈴カステラ(プロフ) - 皆さんコメントありがとうございました!兄弟姉妹設定にします! (12月29日 22時) (
レス) id: 4bba896066 (このIDを非表示/違反報告)
ジュラ(プロフ) - いつも読んでいます!!恋愛の方も気になりますが兄妹設定賛成です!!!勝手ながら家族だと思ってましたwww (12月9日 14時) (
レス) @page3 id: 849f7886e3 (このIDを非表示/違反報告)
語彙力無し男―チヤ(プロフ) - いつも読んでます!兄妹設定に賛成です! (12月9日 11時) (
レス) @page3 id: 4b2018b156 (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - いつも楽しく読んでます!兄弟設定賛成です!1票! (12月9日 10時) (
レス) @page3 id: f211d798b5 (このIDを非表示/違反報告)
まー(プロフ) - いつも更新を楽しみにしております。書きやすい方でいいのですが、全くの他人で「親族?!」みたいな展開にキレて猫被れなくなったお口の悪い戦闘狂モードも見てみたいです^ ^今後も更新を楽しみにしております!! (12月9日 6時) (
レス) @page3 id: 5b65e3addc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鈴カステラ | 作成日時:2025年11月18日 17時


お気に入り作者に追加


