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テスト返し。
これ以上に怖いものは今の私にはないと思う。
……ってのはちょっと言い過ぎかな。
先生が黄土色の大きい封筒を手に持って入ってきた時は、あぁテスト返しだとすぐにわかった。
今は3時限目の授業で、科目は現代文。
解答欄は全部埋めたけど、でも自信はない。
右隣の彼は珍しく机に突っ伏しておらず、真っ直ぐ先生の顔を見ていた。
いつになく真面目なその表情に、そんな顔を見たのは勉強会以来かななんて思う。
「テスト返すから、名前呼ばれたら取りに来るように。」
先生の声が無駄に良く教室に響いた。
「A」と自分の名前が呼ばれて椅子を引いて立ち上がる。
受け取った解答用紙を席に戻ってチラッと除く瞬間は、本当にいつもいつも心臓がはち切れそうになるくらい煩くて痛い。
「………微妙な点数だな」
良くもなく悪くもないという、なんとも言えないような点数。
まぁ、こんなもんだよね…
「松野」と不意に先生が呼び、隣の席から椅子を引く音が聞こえた。
なんとなく彼のことを見ていれば、手渡される瞬間も表情は1ミリも変わってなくて、すごい真剣なんだと感じる。
これもどれも私が教えてくれたから、みたいな思いのせいなのだろうか。
「何点……だった?」と席に座って解答用紙を見たまま固まってしまった彼に聞いてみる。
なぜか嫌な予感はしなくて、寧ろ__________
「…………初めて、現代文でここまで取ったよ、俺、、」
そう小さく呟くと、彼は私に解答用紙をそっと見せてくれた。
右下に書かれた点数を見て「えっ」と思わず声が漏れる。
彼も素直に驚いてるみたいで、さっきから違う意味で震えていた。
「うっそ……」
「な?やばくね?」
「……私よりもいい、」
「え、マジ、?」
コクコクと小さく首を縦に振る。
やばい。これは、彼にしてはすごい記録を出したかもしれない。
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れな(プロフ) - しっぽうさぎさん» 素敵な感想ありがとうございます!とっても嬉しいお言葉ばかりで…書き手冥利に尽きます´ `* これからもまったり更新ですが最後までよろしくお願いします!高校時代はまだ公式さんから何も言われてなかったので、自由に想像しながら書けてたんですけど…焦ってます;; (2019年2月16日 9時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
しっぽうさぎ - 読み始めた瞬間『あ、この作品好きだ。』と感じました。久々の感覚と、久々に好みな作品を見つけられて最高に嬉しいです。関係無い話ですが、私も前におそ松さんの学生ストーリーの作品を作って、あら公式と違うわとなりました。…共感です。笑 (2019年2月14日 18時) (レス) id: dc9d359d93 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 来夢*゚さん» 初めまして。素敵な感想ありがとうございます!キュンとくる内容になってるか微妙だったのでそう言って貰えてとても安心してます。のんびり更新な感じではありますがどうぞ最後までお付き合いよろしくお願いします ^ ^ (2018年5月6日 6時) (レス) id: f22e3e55d7 (このIDを非表示/違反報告)
来夢*゚(プロフ) - 初めまして。学生特有の甘酸っぱい恋物語に当方毎回楽しみにしながらキュンキュンさせてもらってます(〃ω〃) これからも頑張ってくださいね。応援してます! (2018年5月5日 16時) (レス) id: 522dbc585e (このIDを非表示/違反報告)
万珠沙華(プロフ) - レスありがとうございます!! (2018年4月22日 20時) (レス) id: a8300dcf2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れな | 作成日時:2018年4月19日 19時