【おそ松さん】蝉時雨と畢り。

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前を歩く2人の後ろ姿を見て、また小さく息を吐く。


夜なのに蒸し暑い今日は、やけにその暑さが私の体に纒わりついてきてる気がして仕方がない。


前で手と手を絡めて、弄って、遊んで、

暑さを………紛らわす。


何の話をしているのかなんて気にならないし、興味もない。

ただ、2人の顔がやけに楽しそうで、あぁ私の入る隙はないんだなと、そう実感してしまった。


…………なんだ、お似合いじゃない。


どうして今までこの2人がくっつく、なんてことを想像しなかったのかが不思議でならない。

学校でも噂にならなかったし。


………………付き合えばいいのに。




「…………ここまででいいよ」




不意に出た声はあまりにも小さくて、届いていないかもと斜め下を向いていた顔を、ゆっくりと上げる。




「……A？」




でも、前にいる2人は後ろを振り返って立ち止まっていた。

びっくりした顔を彼女はしていて、

なんとも言えない表情を、彼は見せている。


……ちゃんと、聞こえてたんだ。




「…………Aちゃ、」

「ここから私の家までそう遠くないからさ、最後まで送ってもらわなくてもいいよ。もう平気。それにこのままじゃ、フウカが家に帰る時間遅くなっちゃうでしょ？」

「…………」

「だから、ここまでで大丈夫」




最後までしっかり目を見ながら、心の中の気持ちまで伝えようとするかの勢いで言う。




(……平気だよ)




彼は鋭いから、優しく微笑みかけてみせた。

それでも表情は晴れなくて、ちょっとは気づいてるのかもなぁ…なんて思う。

だからって、発言を変えるつもりはないんだけど。




「最後までちゃんと送り届けてあげなよ？」




そう言って2人の横を通り過ぎる。はずだったのに。


パシッと音が鳴るのではというくらい、勢いよく強めに腕を掴まれてしまって、出来なかった。



この掴んできた手が誰のものかなんて、後ろを振り返らなくてもわかるのは、付き合いが長いせい、だからなのか。

それとも、後ろにいるのがあの2人だけ、だからだろうか。




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