【おそ松さん】蝉時雨と畢り。

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「あっつ…」




何処からとも無く聞こえた鬱陶しいとでも言うようなそんな声。

外からは忙しなくセミの鳴き声が響いている。




「教科書83ページ開けー」




少し古めのこの校舎にはクーラーなんてあるわけなくて、

当たり前のように天井に3つ扇風機が取り付けてあるだけ。


でも、それだけじゃこの東京の暑さなんて紛れるわけないから、

それぞれ、授業中なのにワイシャツのボタンを上から2つ目まであけてパタパタと扇いでいたり、

下敷きを使って風を送っていたりしていた。


窓から吹き込む生暖かい風にカーテンがフワリと舞う。

教科書が1ページ捲れるのも気にせず、私はボーッと外を見つめていた。




「また松野は寝てるのか？」

「先生〜あの人この授業の時だけいつも寝てますよ〜」

「おいそれ嘘だろ」

「えーでも半分ほんとのことじゃん」




クスクスと笑い声が教室に響く。

あぁ、また言われてるなとか、懲りないね皆もとか、そんなことはこれっぽっちも思わない。

だってそもそも寝てる彼がいけないじゃない。

それにこれだって単なる皆のおふざけだし。




「はぁ…あとで松野が起きたら職員室に来るように言っといてくれるか」

「わかりましたー」

「アイツまた怒られるんだろうな〜」

「まぁ自業自得だけどね」




チラリと隣の席を横目で見つめる。

風で揺れる前髪がとてもサラサラしていて、顔だけはいいんだけどなぁ、とぼんやりと思った。

あ、あと運動神経も。


こっちに顔を向けて寝るその姿は、嫌になる程絵になっていて。

ほんと………勿体無い。

もし他の女子がこの自分の席に座っていたら、と思うとなぜか身震いがした。




「涎垂らして寝てそ〜」

「うわ〜安易に想像できるわそれ」

「でも、やっぱ隣ずるいなぁ…」

「んーでも隣多分変えられないよ、だって＿＿＿ 」




何を言われても気にせずそのまま寝続ける彼。

あぁ、これはきっと、今回も………




「松野の隣の人、もう起きそうにないから

授業終わったら起こしとけよー」




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