一般人ですが"飛車"になります。 (ページ14)

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ジジイとバーちゃんの出会い。ページ14

私が幼稚園くらいの頃だった。

ジジイはよく死んだバーちゃんの話をしてた。

今思えば、きっと誰かに聞いて欲しかったんだと思う。忘れなければ死なない。ジジイなりに足掻いていたんだ。

バーちゃんは私と違って将棋を指すのが上手かった。

篤満「俺はむかし近奈(ちかな)さんに、ばあちゃんに一目惚れしたんだ。俺を助けてくれてな。そりゃ、かっこよかった。」

貴「ジジイから惚れたんだ、さすが男だわ。」

篤満「ハッ、ガキが何言ってやがんだ。」

ジジイはそんな事をいう幼い私の頭をよく撫でていた。

よく陽の当たる縁側、よくバーちゃんとジジイが将棋を指していたらしい。その場所は私とじじいの定位置だった。

ジジイは助けてもらったお礼がしたくて何度もバーちゃんに逢いに行ったらしい。

篤満「けどな、逢いに行く度アイツは酷くつまらなさそうな顔をしてやがんだ。それがどうにも歯がゆくって……。何故かコイツは離しちゃいけねぇって思ったんだ。」

貴「ジジイの惚気なんて聞きたくなかったよ。」

篤満「黙って聞いてろマセガキ。」

バーちゃんの話をしているジジイは心底楽しそうだった。

バーちゃんの写真はいつもジジイと一緒の写真ばかりだった。一人の写真は一枚もない。公安を薦めなかったのは、バーちゃんみたいに苦しんで欲しくなかったからなんだと今では思う。

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銀行で金を下ろしてる時だった。

運悪く、銀行強盗に出くわした。
俺はそのまま人質にされた。

俺は個性を使っていたから、最悪でも死ぬ事はなかった。

個性を使って運をフルにしていた。
確実に助かる、そう思っていた。

その時、目の前に現れ、犯人を倒してくれたのが彼女だった。

『…た、助かった。ありがと…』

『怪我がないからいいわ。』

『ま、待ってくれ！！』

『…何？』

俺は振り向く彼女に今思いついた事をそのまま口にした。

『お、俺と将棋を一指してくれ！！』

俺がそう言うと、彼女は笑っていた。
これが、俺と近菜さんとの出会いだった。

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篤満「初めはそりゃ、気味悪がれた。だが、俺は個性を駆使して彼女に会いに行った。これが"愛"だ。」

貴「ただのストーカーじゃなくて？」

篤満「執着もいつか愛になるだろうよ。」

貴「ジジイまじで怖ぇよ。」

そんな事を言いながらも、写真のバーちゃんはいつも幸せそうに笑っていた。