偽り夫婦【Kenshiro.K】 (ページ27)

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---川西side---

『市役所まで。』

タクシーの中で、水田との会話を思い出していた。

「お前が俺に紹介してくれた日あったやん？アインシュタインもおった日。
俺、あん時挨拶だけで何も会話してないけどさ、川西がスタッフと話してておらんかった時あの子俺んとこ来てんやんか。

私のせいで色々とお仕事の方にも迷惑をかけるかもしれないです。すみません。って頭下げられてもうてな。」

『え？そうなん？』

「賢志郎の奥さん、ホンマに世間を知らんねんな。
でも、情報量えぐくて。俺のところに来て、賢志郎がよう食べるもんとか、1日のルーティンとか、色々聞いてくるねん。

で、俺が昔料理人やったのもどっかで調べてて知ってるから。俺が作ったのでお前が美味しいって言った物とかのレシピ聞いてきてな。あの子、ホンマにお前を支える気なんやなって。」

「お前の話聞いてたら資産家の家のビジネスに巻き込まれたお前だけが被害者やと思ってたけど、
ホンマはあの子も親のビジネス方針に巻き込まれてたんやなって思ってな。
あんときゆずるも稲ちゃんもおったから、色々芸人とかの話したら、興味津々で聞いてくれてな。

ゆずるも稲ちゃんも、人としてあの子の事めっちゃ可愛がってるで。」

思えば、劇場で一緒になったり仕事で一緒になった時

ゆずるも稲ちゃんも「あの子は？」って聞いてきてたな。

俺のオカンもオトンも、Aちゃんを気に入ってて。

「あれ、Aちゃんと帰らんかったん？」って聞かれた。

最初は笑わへんし自分の気持ちもよう言わんぶっきらぼうな子やと思ってたけど、色んな人に愛される力があんねんな。あの子には。

《お客さん、着きましたよ。》

『はい。これで。』

《丁度いただきます。》

『ありがとうございました。』

市役所に着くと、入口で立ち尽くすAちゃんの姿。