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実家に帰り、荷解きをする。
《A、ちゃんと届けは出したのか。色々と元の姓に戻さないといけない事があるんだからなるべく早くな。》
「はい。」
今更実家に帰って何をしよう。
「川西さんと離婚させてください。」
《お前、何を言ってるのか分かってるのか？》
「分かっています。この結婚がお互いの家のためだと言うことも分かっています。
でも、わざわざ結婚する必要はあったのでしょうか？」
《お父さんの言うことを聞いてれば間違い無いんだ。》
「賢志郎さんは、あなたの息子ではありません。
私とは違います。好きな人、一緒に家庭を築きたい人を選ぶ権利はあちらにはあります。
あちらは今後の人生、生涯を添い遂げたい、この人を支えたいと心から思う人に出会うと思います。」
《………》
「それを、邪魔したくないんです。
お父さん、どうかお願いします。私からの最初で最後のお願いです。」
《……好きにしろ。》
私からあんな離婚の相談を持ちかけたものだから家での立場はもう無いも同然。
「行ってきます。」
お手伝いさんが車を出すと言ってくれたが、気分を変えたくて歩くことにした。
役所までの道、ふと見るとホテルの入口に飾られているウエディングドレスとタキシード。
今頃何事も無く関係が続いていたら、彼と恋愛結婚していたら、私達はこれを着ていたのだろうか。
あの時塩が切れていなかったら。買い物を先延ばしにしていたら。
コンビニから出るのがもう少し遅かったら？
【知らぬが仏】なんて、よく言ったものだ。
私があの光景を見なかったら、まだ一緒に居れただろうか。いや、無理だろう。
あの距離感、女の人の笑顔。私には到底無理だ。
彼を満足させてあげることなんてできない。
そう思い、1歩踏み出そうとすると、
《あ、もしかして…》
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作者名：さっちゃん | 作成日時：2022年6月27日 21時
