チューリップ【七五三掛】 (ページ41)

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お店の裏口に呼ばれ、少し待っていると

「ごめん、このあとすぐシフトだからさ」

いつもの腰エプロンを身につけた龍也さんが出てきた。

『いえ、…忙しいのにすみません』

「ううん、呼び止めたの俺だし。ごめんね」

ちょっと時間かかりそうだから、って中村は先に帰った。

「…多分、わかってると思うんだけど」

「わからないです」

『Aちゃん、』

「…あの時の声、妹さんって事なんですよね」

ほんと、可愛くない私。
自分でこうやって思うことが一番可愛くない。

「あの切り方だと絶対誤解してるよなって、それで」

「…あんなこと言った後だったし、Aちゃんに勘違いされたくなくて、」

ぽつりぽつりと呟く龍也さん。

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「…多分ね、Aちゃんは俺の事、チャラいとか、軽いとか、思ってるんだろうけど」

「俺本気。Aちゃんのこと誰にも渡さないし、今すぐここで抱きしめたいくらいなの」

急にそんなこと言わないで、

だって私、あの時、

海斗さんと一緒にいた。

海斗さんと、。

『…ごめんなさい』

自然に漏れたのはその言葉だった。

「…、なんでAちゃんが謝るの」

龍也さんの手が、そっと肩に触れる。

その指先から凍っていきそうだった。
そうだったならどれほど良かったんだろう。

寒い。
龍也さんに抱きしめて欲しい。

なんてずるい女なんだろ、わたし。

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