おれ、わんこ。

21 ページ21

@you





『紹介しなくていいよ、』





彼女でもないのに、紹介って、なんて紹介されるの？



俺の飼い主です。って？



いやいや、困る。



そんなの、わたしが変な趣味を持ってると思われる。



じゃあなに？



俺のご主人様です。って？



うん、もっと困る。



考えるのやめよう。





「しわしわなってるよ〜？」





『……ご飯ついてる。』





考え込んだせいで寄った眉間のしわを、ぐりぐりと押し広げるりく。



その口元には米粒がひとつ。



漫画か。と突っ込みたくなるそれ。



取って取って、と見つめられ、仕方なく手を伸ばした。





「んふ、ありがとう。おいしっ、」





『ぁ……』





米粒を掴んだ瞬間に掴まれたわたしの手首。



りくはわたしが掴んだままのそれをそのままぱくっ、と食べた。





「ん？まだついてる？」





『いえ、ついてません。』





指先に触れたふにっ、とした感触。



一瞬でも動揺した自分が恥ずかしい。





『それで、服とかどうするの？明日もそれ着るの？』





「あは、とりあえず3日分の服は家から持ってきた！」





あそこ、と指を指した先にはぱんぱんに詰め込まれた旅行バック。



家出少年かよ。

22→←20

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す