オーソドックスな恋模様/4 ページ18
幸せだったんだ、どうしようもないくらい。
こんなに幸せでいいのだろうかと、毎日不安に思う程、Aの隣は心地良かった。
夢を見れない代償はこれだったのだと、そんな馬鹿みたいな考えがじっくりと胸に沁みては馴染んだ。
「お前が俺を忘れてから、俺は漸く幸せな夢を見たんだ」
きっと、お前が聞いたら笑うだろう。
「それが、お前と、カフェに行く夢なんだ」
__蓮巳先輩と、商店街のカフェでお茶をする夢です。
そう言って、照れた笑みを浮かべるお前は、俺の中ではまだ褪せないままだと言うのに、お前はその記憶すらも無くしてしまったのだろう。
夢の中の二人は幸せそうだった。
何気ない話をして、歩幅を合わせ並んで歩いてはカフェに着いたところで、いつも目が醒める。
当たり前だ。そこから先を、俺は知らないのだから。
「行ってみたかったな、…二人で」
呟いた言葉は、夜に溶けるように、誰の耳にも入らず消えて行く。
__いつか君が俺の墓に訪れ、線香の一つでも上げてくれれば、それ以上に幸せな事はない。
そこで二、三粒の涙を流してくれるならば、それだけで俺は救われる。
未来に、そんな馬鹿みたく些細な幸福を抱いていた。
それが、今の俺が見る精一杯の夢だった。
「愛してるんだ、_信じてくれ」
こんな行動でしかそれを示せない俺を、どうか。
踏み出し難いその一歩も、彼女の笑顔を思い浮かべれば容易いものであった。
最後に見た夜空は、星の一つも出ていない暗いもので、きっと明日の天気は大雨だろう、なんてどうでもいい予想をした。
_____それを確かめる術は、もう無いのだが。
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苺果汁(プロフ) - とくめい様、ねむい様、素敵な作品をありがとうございました! (2018年11月6日 0時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
苺果汁(プロフ) - コメント失礼致します。殆どの夢主やあんスタキャラが自殺を選ぶ中で三毛縞さんだけが彼女の幸せを願って生き続けることを選んでいるのが胸に刺さりました。三毛縞さんのソロ曲が彼の本心であるのなら本当にそう行動しそうだなと思い、思わず涙が出てしまいました; (2018年11月6日 0時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - まめだいふくもちさん» わああまめさんありがとうございます光栄です…!コメント見た瞬間息止まりそうでした本当にありがとうございました…! (2018年3月21日 8時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - コメント失礼します。お二人とも好きな作者さまなので、お二人の合作短編が読めてとても嬉しいです。忘愛症候群という切ない題材を繊細な文章で書き上げられていて、どの話も素敵でした。作品を書いてくださってありがとうございました! (2018年3月18日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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