オーソドックスな恋模様／２ ページ16
その日は、最悪の夢見で目が覚めた。
どんな夢だったのか、起きたら忘れてしまったが、それはAに関するものだった気がする。
…覚えて居ないくせに、胸糞悪いということだけは残っているのだからタチが悪い。
どうせ、消えてくれるのならば跡形もなく消えてしまえばいいものを＿＿
「…いや、いかんいかん」
夢の余韻なんかに浸っている時間はないのだ。
待ち合わせの12時までまだ時間はたっぷりあるが、あいつの事だ。30分前にはもう付いているかもしれない。
店の前に、まるで忠犬ハチ公のように一人ポツンと佇む彼女が安易に想像でき、思わず笑いが零れた。
「…仕様がないな」
なにかと目敏い幼馴染が聞けば、上機嫌だね、なんて馬鹿にされかねないだろう。それ程、言葉とは裏腹な声色であった。
彼女に勧められそのまま購入してしまったコートを羽織り、待ち合わせの30分前に家を出た。
待ち合わせ場所には、もう着いていると予想して居た彼女の姿はなく、流石に早く来すぎたかと、思ったよりも浮かれている自分にほんの少し恥ずかしくなる。
まだ約束の時間には早過ぎるのだ。きっと遅くても10分前には来るだろうと予測していた。
然し、10分前にも、その10分先にも、彼女は現れなかった。もう少し待つべきだろうが、どうも彼女が遅刻するということに違和感を抱き、俺は直ぐ様電話を掛けた。
怒っているわけでは無い、ただ、妙なこの胸騒ぎがただの杞憂であることを確かめたかった。
＿長い、長い、コール音
＿＿繋がる気がしない通話の向こう
何度か通話を切られたかのように、無機質な音がしてはその都度掛け直した。
もしや、本当に何かあったのだろうか。
まさかと思っても、あの真面目な彼女が約束の時間を過ぎてもこの場に現れないことが全てを物語っている気がした。
頼む、一度でもいいから取ってくれ。そう、望みを掛けた時だ。
『……はい』
酷くか細い声が、耳に押し当てたスマホから聞こえた。
それに、一気に体の力が抜けていき、今にもその場に座り込んでしまいたい気分であった。
説教も忘れ、ただ安堵の息のみを吐く。
『さっきから何度も掛けて来るようですが、誰かと間違えていませんか？』
それは、息を吸うことさえも忘れたかのような感覚であった。
「…なに、を」
顔が見えずとも、声だけでその言葉が真であることが分かる。
確かに、記憶を忘れでもしない限り、お前が俺との約束をすっぽかしたりはしないだろうな。
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苺果汁(プロフ) - とくめい様、ねむい様、素敵な作品をありがとうございました！ (2018年11月6日 0時) (
レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
苺果汁(プロフ) - コメント失礼致します。殆どの夢主やあんスタキャラが自殺を選ぶ中で三毛縞さんだけが彼女の幸せを願って生き続けることを選んでいるのが胸に刺さりました。三毛縞さんのソロ曲が彼の本心であるのなら本当にそう行動しそうだなと思い、思わず涙が出てしまいました； (2018年11月6日 0時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - まめだいふくもちさん» わああまめさんありがとうございます光栄です…！コメント見た瞬間息止まりそうでした本当にありがとうございました…！ (2018年3月21日 8時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - コメント失礼します。お二人とも好きな作者さまなので、お二人の合作短編が読めてとても嬉しいです。忘愛症候群という切ない題材を繊細な文章で書き上げられていて、どの話も素敵でした。作品を書いてくださってありがとうございました！ (2018年3月18日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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