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李依なるせに刺さるような言葉を投げられた日から数日が経った。
相も変わらず身体が疼くようなフェロモンを醸し出す相手に毒されては幾度も身体を重ね、自己嫌悪に陥る毎日。
彼奴はそんな私の反応を楽しむように急に現れては、段々と甘い香りに飲み込まれていく理性を見て虫唾が走るほどの笑みを向ける。
こんなにも嫌いなはずなのに、本能には抗えない自分の性が憎い。
あらき明日ってAちゃん、空いてたりする?
そんなある日、突然送られてきたあらきさんからのメッセージ。
スケジュールのアプリを開いて、予定がないことを確認すれば、すぐに返事を。
A空いてますよ
あらきじゃあ明日ご飯食べに行こうよ。話したいことあって
返信と同時に付く既読と送られてくる食事のお誘いの趣旨の言葉たち。
断る理由もなく、承諾のメッセージを送っては、スマホの画面を閉じた。
話す内容…きっとめいのことだろうか。
あらきさんには本当の事を言うべきか否か。
あらきさんと彼奴はかなり親しい仲だろうし、正直彼奴に伝わるリスクの方が高すぎる。
色んなことを思案している間に、私の居る図書室にゾロゾロと人が入ってきた事で1講義目が終わったことを悟る。
「A!」
声のする方を振り向くと、満面の笑みで此方に手を振るめいの姿が目に入る。
彼は周囲の人を少しも気にすることなく私の方に駆け寄り、後ろから抱き着いた。
『…勘違いされるからやめてって言ったでしょ』
「俺はそっちの方が嬉しいんだけどなあ」
李依なるせに、めいと付き合っていると嘘をついた日からめいのスキンシップはかなり激しくなり、元々狭かった彼のパーソナルスペースも更に狭くなった。
人前で抱き着くのは当たり前で、隙あらば唇すら奪ってこようとする。
まだ付き合ってないだろう、と指摘をすると、まだって事はいずれはあるんでしょ?と言ってくる始末だ。
『めいに勘違いさせてたら申し訳ないんだけどさ、』
アレはあの場を凌ぐために、と口を開こうとした瞬間、笑みを浮かべたままのめいが私の唇に人差し指を宛てた。
「愛してるよ、A」
ひとつ、またひとつと嘘ばかりが重なっていく。
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作者名:弥雲 | 作成日時:2021年9月24日 11時