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「俺から話す事はないよ、話すの面倒臭いし」
『…番になって欲しいとかないの?』
「α様が番は作んないって言ってんのに、泣いて縋ってまでなって欲しいとは思わないよ。…運命とやらを嫌悪してるみたいだし お前」
彼は私に噛まれ紅く腫れ上がったそこを撫でながら此方に視線は向けずに呟いた。
かと思えば、急にこちらにあの大きな目を向けてにこやかに話しかけてきて、びっくりする。
「あと、お前ハジメテだったでしょ。お前も機能障害か何か?」
『へえ、あんたは機能障害なんだ』
「別に俺が機能障害だなんて一言も言ってねえけどな」
ああ言えばこう言う此奴にイラつきを隠せない。
私は唇を噛み、相手を軽く睨んだ。
そんな私を見て、彼はケラケラと笑いながら此方に近付き、親指で私の唇を薄く開かせる。
視界がふと暗くなったと思った瞬間に 唇には柔らかい感触。
小鳥が啄む様な触れるだけの口付けなのに次第に身体はジンジンと熱を帯び始める。
「…俺さ、初めてのヒートなんだよね」
相手が離れると同時に視界も開けて、目の前には熱を孕んだ視線を向ける彼。
本能に抗う様に視線を外したのに彼の手によって視線は絡み取られて、食らうような接吻が送られる。
腹の底が疼く感覚に襲われて、自分では制御出来ないくらいの衝動に駆られ、自分の力だとは思えない程に力強く相手をベッドに押し倒していた。
『しっかり孕めよ』
自分でも驚く程に低い声。
その部屋に充満していたのは、あの日嗅いだ甘ったるく纏わり付く桃の香りだった。
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作者名:弥雲 | 作成日時:2021年9月24日 11時