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「スマイルくんとは今日やっとまともに話せたし、ぶるーくくんなんて去年クラスが一緒だっただけだよ」
スマイルくんは、心底意味が分からないといった顔でこちらを見た。
「せっかく俺と同じ分野に興味持ってくれてんなら、初対面も親友も関係ないだろ。いろんなこと知りたいんじゃなかったのかよ」
「…それもそっか」
やっぱり、不思議な人だ。あまり話さない人なのかな、なんて思っていたのに。やはり人は偏見の目で見るべきではない。
話題もつきて、スマイルくんは本の世界へと戻っていった。体感30分程度時間は潰れたものの、助けがくる気配はしない。倉庫内の見るものもなくなってきて、いよいよ何もすることがなくなってしまった。
「…すーっ……はぁ…」
大きく深呼吸をひとつ。することがなくなると、頭が勝手に動きだす。良くない兆候だ。思い出したくないことを、思い出してしまう。
スマイルくんがいるから、と強がっていたが、私は狭いところが大の苦手だ。これと言ったトラウマはないものの、かなりの重症で医者からはパニック障害の診断をされている。
エレベーターはもちろん乗れない。電車も不安が勝って、どんなに急いでいても各駅停車にしか乗れない。遠く移動が必要な時は、数回電車を降りなければ目的地まで辿り着けない。
様々な療法を試しているものの、怖いものは怖いままなのだ。狭い場所。それはもちろん、ここも例外ではなくて。
「っ…ふー……」
空間を意識した瞬間、大きく跳ねた心臓に顔を顰めて、ゆっくりと息を吐いた。あまりこんなところに長居したくはないのに。
「…スマイルくん！」
「何？」
本から顔をあげずに返事をされる。ぐらぐらし始めた心が落ち着かなくて、なにか話題を引っ張り出すしか私には選択肢はなかった。
「…人、全然来ないね」
「いよいよこのまま日を明かすパターンか…？」
「ひっ」
嫌だ。こんな狭い空間で一夜を越さなきゃいけないなんて。
「やっ…やだ」
「俺も早く出たいよ」
「どうするの、このまま、誰も来てくれなかったら」
「冗談。見回りの時間になったら誰かしらは来るだろ。鍵外に刺しっぱだし」
「…日落ちてきたね」
「閉じ込められてからだいたい1時間か」
相槌は打ってくれるものの、意識は本に向けられたまま。ぞわぞわする肌をさすって、本を覗き込もうとスマイルくんの隣に座る。
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作者名：ピースラワー | 作成日時：2024年4月14日 19時
