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蝋燭をテーブルの上に置ける状態にして、Aからライターを受け取る。カチッと軽い音をたてて、辺りをゆらゆらと照らした。炎を蝋燭に移して、2人でぼんやりと眺める。
『今度キャンドル作りとかしてみてもいいね』
『私も思った！蝋燭の光、ふわふわしてて落ち着くから好き』
『俺も。Aが、普段の数倍綺麗に見えるから好きだな』
ちょっとくさかったかな、と思いながらAの方を見ると、両手で頬を抑えながら目を泳がせていた。どうやらものすごくクリーンヒットしたらしい。
『きんときのばか！』
「なんでっ！？」
思わず声に出したものの、Aは全くこちらを見ていないため、俺の理不尽な思いは届かなかった。ぷくーっと膨らませたAの頬をつつくと、ぷすという小さな音をたて、空気が抜ける。Aが我慢できなくなって笑いだしたのに釣られて、俺も思わず吹き出してしまった。
パチ
「あ…」
部屋に再び電気がつき、眩しくて目を細める。Aがふっと息を吹いて蝋燭を消すと、漂うのは独特な蝋の匂い。
『床に全部物落としちゃってたんだ』
『Aは怪我してない？』
『ない！…私ときんときのパソコンの方が心配かな』
「あ」
床に転がっていた2人のパソコンを拾い上げ、電源をいれた。幸いどちらのも問題なく立ち上がり、ほっと胸を撫で下ろす。
『早めに電気ついて良かったね』
『…怖かった』
普段はわりと気丈に振舞っているだけ、余計に弱々しいAの姿が胸を痛めつけた。勢いのままAを抱きしめると、きゅっと弱い力で背中に腕がまわされる。
「…俺が一生かけて守るから」
ぼそっと呟いた声は、自分でも驚くほど低くて。目線の先にあった鏡を見ると、見たことない目でこちらを睨みつける俺と目が合った。
あぁ。いつの間にこんなに余裕のない男になったんだ、俺は。
「いーおい？」
いつまでも離す気配のない俺を不審がったのか、Aが俺の背中をとんとんと叩きながら、慣れない発声をした。
暗いところが怖いほど苦手なところも、いつまで経っても舌っ足らずな言葉で俺を呼ぶところも、真っ先に俺を出迎える時に向ける笑顔も。全てが愛おしい。
『…今度からはすぐ手の届くところに蝋燭があるよう、分散させようか』
『私も、ちょっとずつ暗いの克服できるように頑張るね！』
暗所恐怖症な彼女と、そんな彼女に溺れ続ける俺の、2人っきりの世界で会話をする話。
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作者名：ピースラワー | 作成日時：2024年4月14日 19時
