貴方と私の桃源郷【短編集】【中編集】 (ページ1)

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高所恐怖症:nk ページ1

「Aー！今度のタワーのイベントなんだけどさー」

「ん？なあにー？」

編集作業の休憩中、一人ソファでくつろいでいるとNakamuが私を見つけて笑顔でこちらに寄ってきた。

彼はNakamu。私の小学校の頃からの幼馴染であり、6人組実況者グループWhite Tailsのメンバーの一員。私はNakamuに編集技術の腕を褒められ、結成後数年経ってからワイテルズの専属編集係として配属された。

その後は編集の他にも、コラボイベントの手配、グッズの生産の手伝い、配布マップ制作の手伝いなど裏方に関する事は大抵関わらせてもらっている。

中学の頃からパソコンをいじるのが好きで、自己満でちょっとした映像作品を作っていた。だが、まさかこんな形で将来役に立つとは思ってもいなかったわけで。

当時はNakamuにこの趣味のことは話していなかった。しかし高校の頃、現ワイテルズを含む生徒数名が映像制作を始めたことをきっかけに、自分も編集として役に立ちたいと立候補。以来尊敬の念を抱かれてしまっている。

ワイテルズ結成からしばらくはメンバー内で編集作業を行っていたそうだが、どんどん規模が大きくなってきたことに伴って、専属編集係を作ろうという話になったそう。

そこで白羽の矢がたったのが私。あれよあれよという間に話が進み、あっという間に私はワイテルズの裏方係になってしまったのだ。

とは言え現状に全く不満はない。幼馴染と一緒に仕事ができるのは楽しいし、高校の頃の懐かしい顔ぶれに囲まれて幸せだ。私が編集した動画を見て「面白い」と言って貰えるのも嬉しいし、細かなこだわりポイントに気づいてくれた時の多幸感と言ったらもう！

Nakamuの顔を見ていたらふとそんなことを考えてしまい、何度か呼びかけられていることに気づくのが遅くなってしまった。

「A？…A！」

「ん？…ごめん聞いてなかった」

「もー何？疲れてんの？」

「そんなことないよ。ちょっと昔を思い出しちゃって」

「何今更…あーでさ、聞いてなかったみたいだからもう1回言うんだけど、今度東京タワーでタワバラのイベントするでしょ？下見も兼ねて次の休みに俺が見に行かないといけなくなったんだけど…Aはどうする？」

「あー…」

Nakamuの提案に対して、私は煮え切らない返事を返した。

何を隠そう、私は高所恐怖症である。