気づかなければ ページ8
交換条件をしてからとうに一ヶ月が経とうとしていた。一郎くんからはなんの進展もないと告げられ少し残念になる
一郎くん達は呼び捨てにしてくれ！って言うけれどまだ慣れないせいか結構難しい
『よしっと。』
家事が終わり一息つくと二郎くんが二階から降りてきた
｢あ、姉ちゃん！今日の晩飯は？｣
『んー今日はカレーかな？』
｢やった！｣
そんな他愛もない話が嬉しい
けれど今日は歌わなければいけない日だ
｢そんな暗い顔してどうしたんだ？｣
『…今日は歌わなきゃいけない日だから。』
｢っそっか。｣
不謹慎だけどまたあの歌声が聞けることに嬉しさを感じてしまった
｢歌うの嫌いなの？｣
『…好きだった、かな。』
｢そっか。｣
沈黙を破るように椅子から立ち上がる
『…よし、じゃあ行ってくるね！』
｢え、ま、まって！俺も行く…｣
家を出て電車に乗り隣町に行く
『ここでいっか。』
深呼吸をして天に向かうように歌いだす
すると急に人が集まってくる
｢すげぇ。｣
途中少し険しい顔をしながらも姉ちゃんは歌い続けていた
その遠く澄み渡る歌声は鼓動を高鳴らせる
｢…｣
『＿＿＿♪』
『…っ』
｢…大丈夫？｣
水を差し出すと一口飲んで落ち着いた様子を見せた
｢っなんで、あの歌歌ってたの？｣
俺は今自分の気持ちがハッキリと分かった。
『…少し、散歩しようか』
桜が満開に咲く桜並木の道を通り抜けその先にある公園のベンチに腰掛ける
『昔、大好きな人がいてね。』
『その人は昔私に何も告げずに行ってしまったの。』
世界のどこかにはいるんだけどね！なんて冗談混じりに言う姉ちゃんは辛そうに見えた
『だから、歌うの。その人のために。きっとその人しか私の病気は直せないから』
｢…そんな、何も言わないで姉ちゃんのこと置いてったやつなんて｣
忘れちまえばいいのに。
そう言うと驚いたように見つめられる
『…確かにね〜。忘れられれば良かったのにな。』
｢…｣
『…よし！夜ご飯作らなきゃ。二郎くん帰ろう？』
ﾆｺﾘと微笑む姉ちゃんの手を取り駅へ向かう
きっと、この気持ちは気づいたらいけないものだったんだ。
たった二文字の、あの言葉を俺は心の奥に閉じこめた。
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燐(プロフ) - シャルさん» ご指摘ありがとうございます！！訂正させていただきました。こちらこそ読んでいただいて嬉しい限りです！！ありがとうございます。 (2019年3月29日 0時) (
レス) id: 6c48c3ca2f (このIDを非表示/違反報告)
シャル - 細かいかもしれないんですけど、あくまでが悪魔になっていました。間違ってたらごめんなさい！ 今回も面白かったです！更新ありがとうございます！ (2019年3月28日 23時) (レス) id: 0ad92d1aab (このIDを非表示/違反報告)
燐(プロフ) - シャルさん» 暖かいコメントありがとうございます！！私の書きたいことが伝わっていたようで安心しました(泣)コメントを励みに頑張りたいと思います！ありがとうございます。 (2019年3月28日 0時) (レス) id: 6c48c3ca2f (このIDを非表示/違反報告)
シャル - とても感動しました！二郎の思いが複雑で私も胸が締め付けられました！ 大好きです！更新楽しみにしています!頑張ってください (2019年3月27日 23時) (レス) id: 0ad92d1aab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：燐 | 作成日時：2019年3月15日 21時
