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オーディションの合格発表の手紙が家に届いた時、私は両親と驚いた。
｢お父さん、A受かっちゃった。｣
喜ぶ母の横で静かに黙り込んだ父。
父の表情は何とも言えない顔をしていた。
｢お父さん？｣
私の顔を見た父は真剣な顔をした。
｢韓国に行くのか？｣
正直、この時の私も複雑な感情だった。
｢…行きなたい気持ちもある。｣
そう小さな声で言うと父は、｢そうか。｣としか言わなかった。
その日の父は、それ以外何も言わなかった。
｢お父さんも複雑なのね。
大切な末娘が、一番早くに家を出てしまうかもしれないんだから。｣
そう言って眉を垂れさせて笑うお母さん。
｢お母さんは…、どう思う？｣
少し考えた後にお母さんは言った。
｢私も早くに子離れしなきゃいけないのは寂しいよ。
でも、貴方の人生は貴方の物。だから、貴方が思うままに動きなさい。｣
お母さんの暖かい手が私の頬を包んだ。
｢何処にいてもAは私の子供だよ。
だから、遠くにいても応援してる。｣
お母さんの優しい涙に、私もつられて泣いてしまった。
合格発表した手紙には1週間内に返事の手紙を求む文があった。
だから、私は何度もお父さんに声をかけ胸の内を話した。
それでもお父さんはなかなか｢行ってこい｣と言ってくれなかった。
お父さんは気持ちがわからないまま、お母さんの後押しで行くことを決めた。
｢お父さん、私韓国に行くよ。｣
静かに晩酌をするお父さんの背中に声を掛ける。
それでもお父さんは何も言ってくれなかった。
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作者名：ゆうなす
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b115645c0f1/
作成日時：2022年9月29日 18時
