ページ ページ29
.
《よろしくお願いします》
ステレオ越しに聴くテイルさんの歌声は、少し機械ぽくってでも優しい声だった。
《どうですか？》
｢いい感じ。テイル的にはどう？｣
《２サビをもう少し息多めで歌ってみたいです。》
｢ok。じゃ２サビからやり直そうか。｣
《はい。》
作った人にも歌う人にもイメージがあって、それが重なり合い一つの歌になる。
自分が作った曲に命を吹き込まれている感じがして、私は泣きそうになった。
｢…凄い。｣
自分が思う歌い方で仮曲を作ったけど、それを遥かに超えた出来になっていく。
歌手が凄いことは知っていた、けどそれは"つもり"だった事を気付かされる。
｢凄いですか？｣
ドヨンさんの方を見ると、どうやらずっと私を見ていたようだった。
｢僕達はまだデビューしてまだ日が浅いので、自分ではまだまだだと思っています。
でも曲を作ってくださった方にそう言って貰えると、頑張ってきて良かったと思えます。
それに、もっと頑張りたくなります。｣
真っ直ぐにテイルさんを見るドヨンさんに、今までの大変さが私には計り知れないんだと分かる。
でも私に言えるのは、
｢ドヨンさんの声を早く聞きたいです。｣
ドヨンさんの感情を身体の芯から感じたい。
｢期待してください。
もっと素敵な曲にしてみせます。｣
テイルさんがブースから出てくると、入れ替わるようにドヨンさんが入る。
ヘッドホンを付け一口水を飲むと頷いた。
《よろしくお願いします。》
テイルさんの悲しみは、相手を思う暖かい包容力があるとするなら、
ドヨンさんの悲しみは、全身で相手を愛おしくも拒んでしまう声だ。
人によって相手を思う感情の重さは違うんだなと思った。
まだ20歳の私はちゃんと恋愛をしてこなかったから、相手を思うことしか出来ない切なさしか知らない。
ドヨンさんの歌が私に知らない恋を感じさせてくれた。
｢ありがとうございました。｣
歌ってくれた二人に頭を下げる。
｢私の想像を遥かに超えた素敵な歌になりました！
初めての楽曲提供が御二人で本当に嬉しいです。｣
そう二人に伝えると、ドヨンさんは目を見開いた。
｢初めてだったんですか…!?｣
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 547人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NCT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆうなす
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b115645c0f1/
作成日時：2022年9月29日 18時
