106錠 ページ17
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｢と、轟くん、ありがとうございます…｣
自身よりずっと広い歩幅に合わせて、足を進める
驚きと少しの恐怖から 心臓がいやに音を立てていた
呼吸が忙しくなる前に、轟くんの歩みは速度を落としていき いつも通りに戻る
｢…いや、｣
するりと解けた手
夢から現実に引き戻された気分だ
手を繋いだのは何度目だっただろうか
憧れの人に何度も触れる機会がある私は正直相当運が良いと思う
( だから、寂しいなんて思うのは貪欲すぎるのだろう )
一瞬で冷えきった手を、一瞥した
｢薬師神が怒ったら人が死ぬからな｣
｢えっ！？そ、そんなことしませんよ…！｣
「冗談だ」と口元に微かな笑みを浮かべた轟くんが、初めての訓練の時と重なって見えた
…なんだか、懐かしい
そんな思い出に浸っていた私は、ある違和感に気がついて 首を捻る
｢…なぜ私が声をかけられたんでしょう｣
てっきり轟くんだけが目立っているのだと思っていた
同じ雄英の制服を着ていたから、目をつけられたのだろうか？
しかし、そんな私の予測は呆気なく裏切られた
｢無線で先生と話してただろ。その時に映ってたぞ｣
…えっ、と声が漏れた
そんなの、ほんの少しの時間だったのでは？
テレビの力って恐ろしい
一瞬映った私でもああなるのだから、他のみんなはもっと大変なのだろう
知らない人に触れられた手がどうにも痛む気がして、逆の手で隠すように押さえた
｢今朝は何もなかったのか｣
｢え？…あ、朝は車で来たんです｣
なるほどな、と 轟くんは返事をして、前を向く
心做しか 柔らかい表情をしていた
｢…なんか嬉しそうですね？｣
ちょっと気になったのだ
いつも硬い彼の表情が緩い意味が分からない
下から覗き込めば、轟くんは歩をピタリと止めた
「あぁ、お父さんと仲直りしたんだなって、安心した」
ふ、と浮かべた笑みに 私は足がもつれそうになった
不意に止まったから、とかじゃなくて
轟くんが「仲直り」って単語を使ってるのが無性にかわいく思えたのだ
「っふふ……」
「…何笑ってんだ」
「いっ…いえ…ありがとうございます」
笑いが止まらない私に訝しげな視線を向けて、轟くんは再び歩き出す
彼は時々 言動がちょっと天然で、かわいい
普段はかっこいいのに そういうところがずるいと思う
そんなところに惹かれてしまうのだから
…1週間は思い出し笑いしちゃいそう
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しおり(プロフ) - 凄く面白かったです！ (2020年5月9日 10時) (
レス) id: 88ef928d1d (このIDを非表示/違反報告)
霊夢(プロフ) - 爆豪勝己の方のパスワードおしえてください！！！(☆´_ _)ﾍﾟｺﾘ (2019年5月16日 21時) (レス) id: 28399f0f04 (このIDを非表示/違反報告)
雨 - 続き楽しみです！ (2018年1月20日 19時) (レス) id: ea150721a5 (このIDを非表示/違反報告)
しの(プロフ) - あやりずさん» ありがとうございます…！！(；；)亀更新ではありますが、完結まで楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2017年12月29日 11時) (レス) id: 98425ad901 (このIDを非表示/違反報告)
あやりず(プロフ) - 面白いです！！轟くん大好きなので…wこれからも更新頑張ってください〜！ (2017年12月28日 22時) (レス) id: 701a0aacb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しの | 作成日時：2017年10月13日 20時
