検索窓
今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:23,967 hit

知らない ページ22

『ぶどうだ!美味しそう〜!』

「半分くらい持って帰ってくれ」

『いいの?やったね、ありがとう!』

私をじーっと見る冨岡さん。
たまに、すごい見られる。何を考えてるのか分からない顔で。

「…あまり夜遅くに出歩くのは良くない」

『うん…分かってるけど』

冨岡さんは悲しそうに、目を逸らした。

「俺が傍にいれば…そんな風に、思いたくない。
傍にいても護れなかったのに」

なんだかその時だけ、目の前の冨岡さんが
どこか遠くの、別の世界にいるような気がした。

『冨岡さん』

不安になって名前を呼んでみると、またこちらに目を移す。

…違う。冨岡さんじゃ、ない。

彼はこちらにゆっくり寄ってくると、私の頬に触れた。
指が、震えている。

『…冨岡さん』

その手は落ちて、私の腕を撫でる。

蒼い瞳は、これ以上なく不安定に揺れていた。
嵐で荒れる海に似ている。

肩に両手を置いた彼は、本当に優しく…
というよりも、怯えながら、壊れ物に触るように私の体を抱き寄せる。

何をするんだ、なんて言えなかった。

ただ、行動の理由は分からない。

『何に、怖がってるの?』

悲しかった、寂しかった。
冨岡さんの苦しみは、私にはきっと理解できない。分け合えない。

「…!」

冨岡さんは、我に帰ったようだった。
すまない、と小さく言って離れた。

離れなくて良いよ。ちゃんと教えてよ。


 それでやっぱり人違いでした、とか言わないよね。
私は冗談混じりにそう言った。

…本当は、人違いだったんじゃないの?

もう言いだせなかった。

やたら付きまとってくるし、話も下手だし
変な噂は立つし、たまにイラッとくるし

冨岡さんなんて、居なくていい。全然、居なくていい。

けれど、この変な繋がりを自分からは切れない。

…なんで私、こうなっちゃったんだろう。

友達→←いつも居る人



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (60 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
76人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 冨岡義勇
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

いのり(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» 最後まで読んでくださってありがとうございます!締めが善逸くんですいません(笑)これからも夢主ちゃんをよろしく頼みます!よかったら他の作品も応援お願いしますね! (2021年11月6日 20時) (レス) id: c234760d5a (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 我妻…、(何でお前が最後で締めるんだ…)?完結おめでとう…。次は、誰の書くんだ…?良かったぞ。これからも夢主と仲良くするつもりだ。冨岡義勇だ。これからも頑張ってくれ。 (2021年11月6日 15時) (レス) @page42 id: e9e5935c56 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - なんて言う悲しい匂いだ…。本当に人違いですかね?俺の鼻は人違いでは無いって言ってます。竈門炭治郎です。続き楽しみにしています。 (2021年10月20日 7時) (レス) @page32 id: 38350d71b2 (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - 釜さん» ありがとうございます!とても励みになります♪これからも応援いただけると嬉しいです! (2021年9月18日 8時) (レス) id: c234760d5a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - こんばんは!ほんわかしたお話で、描写も綺麗で好きです! (2021年9月17日 21時) (レス) id: e08aae1730 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月13日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。