冨岡さん、人違いです！【鬼滅の刃】

大人げない ページ20

『負けちゃったねえ』

「うん…でもねえちゃんやっぱ凄いよ！」

激闘の末、冨岡さんは私の足を蹴ってしまう。

ファウルを取られ、私たちのチームにボールが渡ったのである。

つまりざっくり言うと冨岡さんからボールを守れた！
…ってことにはならないか。

「なんか持ってるよねえちゃんは！まぐれの神！」

『今まででいちばん心外な呼び方』

「柏原さん、次も頼む」

『次って何』

たまにはこんな感じで童心に帰るのもやぶさかでは無かったりする。
けど明日、絶対筋肉痛だ。

すると、少年たちが歓声を上げているのが聞こえた。

「なぁなぁ、こいつねえちゃんのこと好きなんだって！」

「い、言うなよ」

「初恋だよ初恋！」

きゃっきゃとはしゃぐおませな子供たち。

『ふふ、嬉しいね』

この年頃の子は男女関係なくそういう話が好きだよなぁ。
微笑ましい気持ちで冨岡さんを伺うと、

苦虫を千匹くらい噛み潰したような顔をしていた。

『と、冨岡さん、子供の前でなんて顔を』

冨岡さんは私の肩に手を置き、腰を折って少年たちに顔を寄せた。

「柏原さんが欲しければまず俺を倒せ」

声低っ。
少年たちが本気でびびっている。
膝をつく子もいる。

ごめんね、大丈夫だからねと言いつつ冨岡さんを睨む。

「行こう」

『冨岡さん、あんなの真に受けなくても』

「…」

しかし冨岡さんは私の腕を引く。

『ご、ごめんね。ばいばい！』

大股でずんずんと歩いていくので、小走りでついて行く。
声をかけても止まってくれないし、手を離してもくれない。

『冨岡さん…うわ』

唐突にぴたっと立ち止まる冨岡さん。
ぶつかる私。

「…大人げなかった」

手の力を緩めるが、依然私の腕は持ったままだった。

『冨岡さんが大人げないのはいつものことだよ』

「ふっ…はは、そうかもしれないな」

軽やかに笑う冨岡さんは珍しい。
案外可愛い。

『でも子供を怖がらせるのはやめて』

「だが、あれくらいしておかないと」

『何？』

しかしそこで冨岡さんは口ごもる。
ほら、分かるだろう、とかごにょごにょしている。

『あ、分かった。やきもち』

めっちゃ不服そうな顔。

「…そういうことでいい」

『何その言い方。めんどくさいなあ、冨岡さんは』

更に不服そうな顔。
冨岡さんはだいぶ表情豊かになったと思う。


…で、いつまで腕握ってるの？

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