毒を食らわば皿まで (ページ5)

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第5話ページ5

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気まずさに耐えかねて身をよじると、思いの外大きな音で椅子が軋んだ。

視線を感じると、申し訳なさそうな顔をした冬美さんと目が合った。私は反射的に微笑を返した。が、多分上手く笑えていない。

どうしてこんなことになったのだろう。私は目をつぶって、ここまでの過程を回想した。

＿＿冬美さんに案内されたのは車両の最後列だった。

「ここが一席空いてるから、座って」

冬美さんは一番奥の席に腰掛けて、通路側の席をずいっと示した。てっきり隣だと思っていた私は拍子抜けした。視線をずらすと、真ん中には学生ものの鞄が無造作に置かれており、中から高校数学の教科書が飛び出している。

私は嫌な予感がした。

「冬美さん、もしかして…」

「そうそう！言ってなかったね。Aさんの隣には…あ、帰ってきた！」

ギギギと首をねじると、そこには肩に雄英の一つ星を乗せた男子高校生が、怪訝な顔をして立っていた。

左右で分かれた紅白頭にオッドアイ。間違いない。この特徴に当てはまる人を、私は一人だけ知っている。

そういえば冬美さんは、“私達の席”と言っていた。
そりゃあ、いるよね。

「…うるさくしないなら」ということで隣に座らせてもらったが、気まずくてたまらない。

こんなことなら、一人でデッキに立っていればよかった。たとえ座れなくてもその方がずっと気が楽だ。

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