毒を食らわば皿まで (ページ1)

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第1話ページ1

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四月の上旬、桜が咲き誇り空気が温む春真っ盛り、とある駅のプラットフォームにて。

人で溢れ返って誰が誰かも分からない人混みのなか、ひっそりと佇む三人家族がいた。糊の取れない制服に着られた女子高生は一人娘、見送りに来た男女は両親と推測できた。

一見するとありふれた家族だが、よく観察すると、少し異質さをおぼえる。わざわざ見送るくらいなら、顔を合わせるとか激励の言葉をかけるとか、もっと名残惜しそうにするはずだ。

どうして三人の視線が交わらないのか。どうして少女はホームのその先の空ばかり食い入るように見つめているのか。そもそも、この三人は本当に家族なのか？疑問が湧き上がってきた。

すると、父親らしき人物が少女に声をかけた。彼女の黒髪が揺れる。

安堵した。自分が見かけたのはたまたまの沈黙の瞬間だった。家族といえども無言の時間はある。言葉の数だけで仲を勘ぐるのは無粋というものだ。

見ず知らずの人に時間を使いすぎた。朝から一体何をやっているのやら。

中断していたスマホの画面に再び目を落とした。

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