シンデレラエクスプレス

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「なんだよ…、もう」

「え？」

「すげえ威力、マイッタ…」

「はい？」

「はぁぁ…、」



「…」




どうしてこっちを見るなと言ったんだろう…、とか
何度も繰り返されるため息、とか
意味不明な言動、とか

それらの意味をつい考えちゃって
もしかしたら、不快にさせたんじゃなくて…なんて自惚れたことを考えたら胸がドクンと高鳴る



まさか、…まさか………？



「…はぁぁぁ…」

「…」



重苦しい沈黙の中アイスコーヒーが運ばれてきた。
部長はすかさずグラスを掴む。



静かな部屋にゴクゴクとコーヒーを喉に流し込む音だけが聞こえて
ズズッ…と全部飲み干して、部長はトン…とグラスをテーブルに置いた。



「ごめん。もう大丈夫。顔上げていいよ。」


そっと顔を上げると目の前の部長は普段の部長と変わらない。
もちろん、表情も視線もいつも通り。




「えーっとね、」

「は、はい」

「まずは…Aクンの勘違いを正しときたいんだけど」

「………勘違い、…ですか？」

「そう」



「……。…ッ、」



あーー！！そりゃそうだよね！
オマエごときがなにをってことよね？

ってか、酔っ払ってる部長の言動に一瞬でも自惚れたコトがバレてるなんて！

自意識過剰にも程があるってヤツですよね？！

これは恥ずかしい！
恥ずかしさで死ねる！




「すみません！！
何でも自分の都合のいいように考えちゃって、私ってば！」

「へ？」

「ホント恥ずかしいっ、」

「え、なにが？」




口に出すのもおこがましいけど、ってか恥ずかしすぎるけど！



「ですから、私が あのその…」

「うん？」



どういう言い方したら部長に好かれてるかも的な妄想をしちゃいましたってこと、冗談ぽく言える？

あははーって笑ったら、あははーで終わらせてくれるかな？



「えーっと、…………ですから、」

「なんか、また勘違いしてる？」

「いえ、もう大丈夫です！」

「なにが？」

「だから…」



ああダメだ。笑えない。
下から顔を覗かれたら一瞬で体が熱くなる。

ブンブンと首を横に振るだけで精いっぱい。





「Aクン」

「…はい、」

「ありがとね」

「え？」

「それと、ごめん」



謝るのは私のほうよね、なのになぜ？



ジーっと部長を見つめたら
少しだけ部長が照れたように見えた。


けど、これも私の勘違いな自惚れからくる錯覚。

もういい加減、学ばなきゃ。


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