～小さな世界～【永瀬廉】 (ページ41)

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「永瀬さんを怖いだなんて、一度も思った事ない。

親父さんの事も知らなかった。さっき調べた。

それでも、私は永瀬さんを怖いだなんて思わない。」

ただキツく、

手を握りしめる事しか出来なくて

涙がただただこぼれ落ちる。

「…汚くなんてない。永瀬さんは、…っ…

とっても綺麗だよ？…っ…すごく綺麗なんだよ？」

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「…永瀬さんは違う。親父さんとは全然違うよ。」

永瀬『……。』

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すると

次第に永瀬さんの手に力が入り

そのまま私の手からスルッと抜けた。

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永瀬『……』

「……」

その手で私の頬を優しく撫でた。

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永瀬『…なに勘違いしてんの』

「……？」

呆れたように微かに頬を緩ませて

私の涙を拭く。

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永瀬『死のうとなんかしてへんし。』

「……」

永瀬『ただ、外の空気吸いたかっただけ。』

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透き通る夏の風が頬を撫でる。

小さな星空の下、

ぎこちなく距離を縮める男女の影。

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永瀬さんは

私の下ろした髪を指でするすると通していく。

愛おしそうに、愛でるように。

そして、

永瀬さんはこんな事を言った。

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永瀬『…俺をベンチに移動させてくれへん？』

「……？」

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永瀬『…Aの隣に座りたい。』

「……」

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身体を支えながら

屋上のベンチに永瀬さんを座らせて

私は永瀬さんの右側に座る。

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静かに差し出された右手を

私も自然と握る。

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永瀬『それ私服？』

「…え？」

私を下から上まで

まじまじと眺めては、

「…あー、はい。」

永瀬『…んふふ、…可愛いな。』

「……」

不意打ちにこんな事を言うので

私は、どんな顔をしていいのか分からず

下を向く。

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こうしてベンチに隣同士で座っていると

なんだか、ただのカップルみたいで

急にむず痒くなった。

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永瀬『……』

「……」

ゆっくりとした静かな時間。

永瀬さんはこの沈黙を

悲しい言葉で破った。

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永瀬『別に、どうでもいい。』

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