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すると
バッと勢いよく顔をこちらに向けて
目を丸くして驚いた顔をする永瀬さん。
「…ふふふ。…やっとこっち見た。」
永瀬『……』
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こういう事は、
永瀬さんに限らずよくある話だ。
この時間がとにかく面倒くさいと
嫌がる患者様は多くいる。
でも、お風呂に入れないのだから仕方ない。
今日を逃すとまた期間が空いちゃうよ？
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「…冗談です。…早く身体、拭きましょう？」
永瀬『……冗談？』
「え？」
首を傾けて永瀬さんは
頭に何やらハテナを浮かべている。
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そして、
永瀬『脱がしてくれへんの？』
「……」
またまたとんでもない発言を
永瀬さんは平気な顔をして言う。
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「…はい？」
永瀬『いいよ。』
「…だ、…はっ？」
永瀬『はい、どうぞ。』
「…いやいや、…は？」
永瀬さんは
こちらに向かって腕を伸ばし、
まるで脱がされ待ちのような目をする。
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永瀬『……』
「……」
完全にフリーズしてしまった私に
永瀬さんはしばらくして、
呆れたように息を吐いて腕を下ろした。
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永瀬『…Aもやろ。』
「……え？」
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右手で自分の首を触りながら
顔を歪ませて言う。
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永瀬『勘違いする男、多いと思うで。』
「……」
永瀬『……』
これは、
どの話の続きをしているのだろうか。
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もしや、
“ 女の子、口説き慣れてますよね。”
…これ？
これですか？
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「…待って下さい、…え？」
永瀬『なに。』
「…私が？…私が口説き慣れてると？」
永瀬『……』
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永瀬さんは私から目をそらす。
私は、
思わず永瀬さんに濡れタオルを投げつけた。
永瀬『…え』
「慣れてなんか無いです、やめて下さい！！
私は、…私は、全然、…むしろほとんど…
だ、男性とお付き合いをした事もありません！！
一人も…ってわけじゃないけど…で、でも全然。
それを口説き慣れてるだなんて……私は…」
あれ、
私は何故こんなに必死で、
誤解を解こうとしているのか。
その流れで割と恥ずかしい事まで
言ってしまったではないか。
投げられたタオルを手に持ち
黙って私の顔をじっと見てくる永瀬さん。
私は、急に恥ずかしくなり
顔がみるみるうちに赤くなる。
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作者名：ayu
| 作成日時：2020年10月19日 11時
