～小さな世界～【永瀬廉】 (ページ32)

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急に呼吸が出来なくなった。

瞬きを忘れた。

永瀬『……』

「……」

がっしりと身体を捕まえられて

身動きが取れない。

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「…なにを…言って」

永瀬『細い腕とか言うからやろ。』

「…だ、だって…」

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すると、永瀬さんは腕を緩める。

解放された私は

ストンっと力を無くすよう椅子に座った。

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永瀬『……』

「……」

永瀬『…A？』

ほとんど放心状態に近い中

私はずっと思っていた事を

ついに口にする。

「…永瀬さんって…」

永瀬『ん？』

それは、

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「…女の子、口説き慣れてますよね。」

永瀬『……』

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＿＿A、永瀬さんに相当惚れられてんね。

ただ防御したいだけなのかもしれない。

海人のあの一言に騙されないように

傷つかないように。

でも。

よーーーーく考えてみたらおかしな話だ。

私はもう一度

再確認をするように

永瀬さんの顔をじっと眺める。

顔のパーツが全て完璧に並べられ

どの角度から見ても美しい絵姿

派手に染められた髪の色

きっとこの容姿で

何人もの女性が落ちてきたであろう。

無意識に近い距離感や

たまに口を開けば甘い言葉を囁き

そして先程のように

突然、男を魅せてくる。

いやーー、怖い。

この人怖いわーー。

危うく私もこの沼に落とされる所だった。

私は看護師

彼は患者

それ以上でも、それ以下でもないのよ。

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そう考えると、

ちょっとだけ気が楽になった。

なんだ。

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なんだ…

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永瀬『口説いた事なんか無いわ。』

「…へ？」

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すると永瀬さんは下を向き

少しだけ苛立ちを見せる表情に。

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「…永瀬さん？」

永瀬『口説きたいなんて思った事ない。』

「……」

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瞳だけをじろりと私に向けて

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永瀬『…Aにだけは、』

「……」

永瀬『……なんか勘違いされたくない。』

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そして永瀬さんはムスッとした顔のまま

私に背を向けて

布団の中へと潜り込んでしまった。

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拗ねた。

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