73 Sho side ページ23
sho side…
で、とにかく心配になった俺たちは
マネージャーに廉の最近について
そして休止期間中の事をいろいろと聞き出した。
でも廉もマネージャーに全てを話してはいないらしく
マネージャーから貰った情報は
稲刈り、田んぼ、Aさん、地名、可愛い猫の話
マネージャーの分かりづらい村の地図
と、たったのこれだけ。
その情報だけを頼りに海人と二人で
ノコノコとこの村までやって来た。
.
そして、ようやく会えたAさん。
いや、Aちゃんか。
見た瞬間、すぐに分かったね。
うわぁ
廉、好きそぉーー…
誰が見ても可愛くて美人。
大人っぽくて、どこか奥ゆかしさもあって。
廉はさぞかしこの1年、楽しかっただろうなと。
.
あと、
ちょっと廉と似てる気もしたかな。
人に頼るのが下手くそで
一人で一生懸命に生きようとする感じとか。
廉とAちゃんの中で
今でも何か特別なもので繋がっているような
そんな風に俺には見えた。
『Aちゃん。』
「はい。」
『もう一度、廉に会って頂けないでしょうか。』
真っ直ぐにAちゃんを見つめて俺は言う。
Aちゃんは、
黒い髪を耳にかけながら少し考えるように俯いて
そして、静かにこう答えた。
「私、自信がないんです。」
海人も俺も、
黙ってAちゃんの話に耳を傾けた。
「いろんな事から逃げて、目を背けて
私は、そうやって今まで生きてきたんです。
でも、廉に出会ってからはそんな自分が、
すごく嫌になりました。」
「ちゃんと目標があって、どんなに辛くても
苦しいことがあったとしても、廉は逃げなかった。
とても意志が強くて、素晴らしい人だと思います。」
Aちゃんは、
廉と過ごした時の事を思い浮かべながら
話しているように見えた。
「来年、私はこの村を去ります。
もう一度自分を試したいと、廉と出会えて
また、そう思えるようになりました。」
「だから…廉とは会えないです。ごめんなさい。
それに今、また廉と会っちゃったら私…」
そして、Aちゃんは
「次こそ、好きって言っちゃいそうだから。」
そう言って、
少しだけ目に涙を浮かべながら笑っていた。
.
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作者名：ayu
| 作成日時：2020年9月19日 1時
