～ネコ日和～【永瀬廉】 (ページ32)

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「……降り始めてきましたねぇ。」

永瀬『雪なんて滅多に見いひんからなぁ俺。』

「私も都会にいた頃は、気温の高さに驚いたよ。」

永瀬『……。』

この時期は、

縁側に居たら寒さで死んでしまう。

だから冬の私の居場所は、

殆どがこのコタツで一日を過ごす。

窓からは、

積り始めた雪景色。

あと数日で、全て真っ白な雪で覆われる。

永瀬『東京？』

「…ん？」

永瀬『都会におったのって、東京？』

「あー、うん。そう、東京。」

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上京してすぐに

小さなアパートで一人暮らしをしていた時。

わざわざコタツを持って行ったのに、

一度も使わなかったのを覚えている。

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永瀬『A…ってさ。』

「ん？」

私の対面に

同じようにコタツに包まって座る廉は

視線をどこかに置きながら話し始めた。

永瀬『そのぉー…都会おった時も、

部屋にテレビとか無かったん？』

ん？テレビ？

永瀬『…いや、別に深い意味はないねんけど。』

「あったよ？」

永瀬『えっ！？』

廉は急に動揺したように驚いた顔をする。

なになに、どうしたの。

永瀬『…ほぉほぉ、…なるほどな。』

「え？なに、なんの質問？」

永瀬『いや、深い意味は無いねんけど…そのぉ』

急に喋るのが下手くそになる廉。

それでも黙って聞くことにした。

永瀬『…テレビあんまり見ない派…とか？』

「…？」

永瀬『ちゃうで？変な意味ちゃうで？マジマジ！』

逆に怪しいよ、それ。

「う～ん。確かに、殆ど付けてなかったかな。」

永瀬『やっぱそうなんや。』

「…やっぱ？」

永瀬『え？…いや別に。てか寒いわぁー』

テレビを見てないというと

ホッとした顔をする廉。

気になるけど

これ以上は聞いて欲しくなさそうだったから

黙って熱いお茶を口に運ぶ。

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永瀬『東京どうやった？』

「え？」

永瀬『楽しかった？』

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湯呑みを持つ手が

ピタリと止まる。

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永瀬『ごめん、答えたくなかったらいい。』

「……。」

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東京は。

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私にとって東京は。

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「……れん」

永瀬『A。そっち行ってい？』

「え？」

対面に座っていた廉は、

自分の元に置かれていた湯呑みを

スーッと私の方へ滑らせてきた。

永瀬『隣、行ってい？』

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