～ネコ日和～【永瀬廉】 (ページ4)

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「こんな物しか作れませんでしたが…」

『…食っていいんすか？』

「どうぞ。お口に合うかどうか…っ！」

と、私の言葉を最後まで聞かず、

その男は目の前のトマトパスタに食らいつく。

よっぽどお腹が空いていたのか

味の感想なんて言う事も無く

一瞬で食べ終わった様子の男。

「…た、足りましたか？」

『……正直言っていっすか？』

「…はい。」

『あと5回はいけます、…これ』

5回…

あと私、5回も作らないといけないの？

トマトパスタ。

茹でるの大変だなぁ～

「…分かりました、少しお待ち頂け」

『…フッ……あ、すんません。』

は？

今、鼻で笑いました？

その男は、

少しだけお腹が満たされた余裕からか、

無駄に綺麗な歯を見せて笑った。

「…な、何か？」

『んふふ…いや。その、ちゃいますよ？』

「はい？」

空になったお皿を両手で持ち

それを私に見せて

『あと5回作れって意味じゃなくて、それくらい

めーーーっちゃ美味いっす、これ。俺の好きな味。』

“本間ありがとうございます。”

と、私にペコッと頭を下げて

その男は、律儀に台所の方へ食器を持っていく。

「あ、大丈夫です、置いといて下さい！」

『いやいやいや、それは無理っす、せめて洗わせて』

「ほ、本当、大丈夫ですから！」

『無理っす無理っす、マジで座っといて下さい』

いや、勝手にキッチン触られんのが

嫌なだけなんだけどな。

まぁ、でもめんどくさいから

黙って言われた通り、

男が洗い終わるまで座って待った。

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切れ長のクリッとした瞳

自然と上がった口角

そして綺麗な筋の通った鼻

全てのパーツがバランス良く並べられた

整った容姿を持つその男は、

パンパンに詰め込んだ大きなリュック

歩きやすさよりもデザインが重視の

横にラインが入ったパンツにTシャツ姿。

旅人にしてはお洒落で

派手な装飾品を至る所につけているし、

ただの旅行にしてはこの村のチョイスは渋過ぎる。

私は、その不思議な男を

上から下までじっくり眺めているうちに、

『マジで、本間にありがとうございました』

「…あ…いえ、それは別に。」

いつの間にかリュックを背負い

この家を出て行く準備を終えていた男は、

玄関先へと歩き出した。

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