～ネコ日和～【永瀬廉】 (ページ27)

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そんな奴の比にならないくらいだよ。

「廉は、ちゃんと心に残るよ。」

永瀬『……。』

廉の1年という、しばしのお暇。

普段は、冗談を言ったりふざけたりして

あまり真面目な一面を見せようとしない廉。

だけど廉は、

大きなリュックを背負って

わざわざ一人でこんな所まで

無計画に当てもなく歩いて来た。

きっと、何かあったんだよね。

廉のプライドとか、廉の性格上

簡単に理由を人に言えるほど

器用に出来ていない事も知った。

でも、少なくともこの場所で、

私と居る時間だけはいろんな事を忘れて

前を向くきっかけになればいいと思う。

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永瀬『俺も。』

「……。」

いつの間にか廉は、

私の横顔をじっと見つめていた。

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永瀬『多分、一生残ると思う。』

「……。」

私達には、

ちゃんと終わりがあって。

そこには抗えないから。

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「…うん。」

永瀬『……。』

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心の奥にある本当の想いとやらは決して

口にしてはいけない。

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永瀬『…寒ない？』

「…んー、ちょっと冷えてきたね。」

永瀬『手、握ったろか？』

そう言って、

私に手を差し出してくる廉。

「いらない。」

永瀬『そこは握る雰囲気やったやろ。』

「おにぎり食べてるもん。」

永瀬『じゃあ食ったら握っていい？』

「食べたら帰るよ。自転車で。」

“手くらい触らせろや”

と、廉は半分笑いながら言っていた。

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トントントントンッ

トントントントンッ

軍手をはめて

タオルに挟んだある物を金槌で叩き割る。

永瀬『怖い！フハハッ、めっちゃ怖いねんけどこれ』

「ふふっ、もぉーー！早くやってよ！」

永瀬『指やってまいそう。マジで怖い。』

この村にあるクルミの皮は硬くて分厚いので、

こうして金槌を使わないと割れない。

そして普段、金槌を使う事が無いという廉は

怖がってなかなか作業が進まないのだけど、

永瀬『はぁーーー、怖い！』

「ふふふっ、まだまだあるよ。」

永瀬『指折れたら、さすがに手当てしてな。』

「病院連れてくね。」

縁側に座りクルミ相手に奮闘する廉は、

見ていて飽きなかった。

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