79 ページ33
.
「永瀬…」
永瀬『来んな。風感じてんのよ俺。邪魔せんといて』
「あんまり吹いてないね、風。」
永瀬『……』
初めて来た屋上。
柵に手を置いて立つ永瀬の横に
私も真似て立ってみた。
新しい制服を着た人々が
ぞろぞろと下校する様を上から眺めて
そのまま静かな時間を浸った。
すると、
ようやく左からの視線を感じて
私もそちらに顔を向ける。
「ん？」
永瀬『……』
「ふふ、なに。」
永瀬『……』
すると永瀬は、自身の耳を赤くして言う。
永瀬『…俺らじゃ足りひんの？』
「…え」
永瀬『……友達。…作りたい言うてたやんお前』
.
.
凛々しい眉毛がハの字に変わり不安げに
永瀬『…そもそもあそこの部員数は3人って決まっちゃってんのよ。今更人数増やしたいとか、先生も許してくれへんって…。それに優太のファンじゃない奴がおったら、もうあんな自由に出来ひんくなるやん。せっかく俺うちわも作れるようになってきたのに、腕が鈍る…。あと、俺の部屋も、…大人数はあんま入れたくないし、あと、…ほら…お前も部長で多分大変なるやろし、てか俺も副部長やねんから一応責任ってもんがあるやんか。新入生の育成まで手回らんのよ俺も。海人だって後輩に100パー舐められるやろし、あいつも傷つくで？あとは、ほら。その、あれ、…その、』
「……ふっ、…ふふふふ、…」
いろーんな理由を絞し出してきた永瀬。
思わず私が笑うと、余計にムスッとする。
今までの私だったら、
なんでそこまで否定するの！？
とか言って怒っちゃってたかも。
でも、今はなんとなく分かる。
永瀬の言いたい事が覗いて見える。
永瀬『笑かすような事言うてへんけど。』
「…うん笑。ごめんね、…ふふ」
永瀬『…もぉええわ。…勝手にしろボケ』
「……」
.
もっと、近くに行きたい。
もっと、永瀬を知りたい。
私は、左に身体を寄せて
肩と肩が触れ合う。
パッと顔を上げた永瀬と
再び視線を重ねて
「看板、…もう捨てちゃおっか」
永瀬『……』
「あれ、結構重たいの。…永瀬も手伝ってくれる？」
永瀬『……』
.
.
面倒くさそうに永瀬は
…いいよ、と言った。
じゃあ戻ろっか、そう言うと
永瀬は私の腕を掴んできた。
そして
.
.
永瀬『あのさ…』
「……？」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1428人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ayu
| 作成日時：2021年2月10日 0時
