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先輩の前髪から覗く瞳は、
まるで瞬きを忘れたかのように見開いて
私を捉えた。
明らかに、
私達の間に、
今までとは違った空気が流れてしまい…
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「…すき…焼きにします。」
永瀬『……。』
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私、今…
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先輩は、
私の言葉を聞いた途端、
フッと呆れたように笑う。
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永瀬『…はぁ？お前紛らわしい言い方すんなよ』
「……ははは…」
私、今なんて…
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永瀬『すき焼きかぁー、
俺、焼肉の気分やってんけどなぁ〜』
今なんて、言おうとしたんだろう。
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「…ここで大丈夫です。」
永瀬『ん。』
家の近くまで、
本当に送ってくれた先輩。
「ありがとうございました。」
永瀬『おぅ。明日、遅刻すんなよ。』
「はい。」
先輩は、
私に軽く手を振って
そのまま背を向けて歩き出す。
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ずっとただの怖い先輩だと思っていた。
もっと優しくしてほしいとか
丁寧に教えてほしいとか
私が質問した時に冷たい顔をしないでほしいとか。
文句しか無かったのに。
でもさっき他の先輩が
＿＿永瀬はなぁ、後輩いじめて楽しんでるから。
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これを聞いた時、
例え冗談でも、なんか許せなかった。
あんなに毛嫌いしていたのに、
この1か月で、私は先輩の事が大好きになった。
早く、先輩のような人になりたい。
早く、先輩のように、
後輩に慕われるようになりたい。
こんな風に、心から尊敬出来る様になった。
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「先輩！！」
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大声で叫ぶと、
数メートル先まで歩いていた先輩は、
ゆっくりと振り向いて私を見る。
永瀬『んふふ…うるさい、なんや。』
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私は、大きく息を吸って、
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「私もいつか、先輩みたいになります！」
永瀬『……。』
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そして、
私はもう一度、
先輩に向かってグッと親指を立てて笑った。
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永瀬『…フッ、…恥ずかしわ。』
「…へへッ」
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私は、頭を大きく下げて
「…また明日。」
永瀬『うん。』
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早く会いたい。
なんて、
よく分からない気持ちを抱きながら
先輩に背を向けて、
私は自宅へと向かい歩き出した。
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作者名：ayu
| 作成日時：2020年9月7日 12時
