tonight.3

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「っ、裕太…………！」



どんどん先を進んでく。
私の声にも反応してくれない。


大きな廊下を曲がったところに
引っ張りこまれた。




「……ねぇっ、瑞穂さん……、大丈夫かな



「そんな事どうだっていい」



「どうだっていい、って
あんな風に裕太に言われたら
きっと瑞穂さん悲しい、



「ほんっとにAっていい人だな、」




だって、
好きな人にそんな事言われたらって





「だって、瑞穂さんは…………




「お前は？
あの場にいて、辛かったんじゃないの？
自分の事、もっと大事にしていいんだって。」




そっと、私を抱き寄せた。




いつもより高めの体温が
シャワーの後のボディソープの匂いを
余計感じさせる。





「じゃあ言うけど、
好きな人があんな風に言われてるのみて
耐えろっていうわけ？」








……………………なんで、






「言ったじゃん、
お前が俺のせいで泣いてるとこは
見たくないって。」






紗菜も裕太も
こんな私に優しいんだろう。









堪えきれない涙に、







「いい子ぶるのをやめられるのが
俺のとこなんでしょ。」



私を抱き寄せたまま
ゆらゆらと揺れながら、
“泣いとけ泣いとけ〜”って。




「…………怖かった、」

　
「うん、」


「瑞穂さんと会いたくない、」

「うん、」

「自分が一番よく分かってるのに、
人に言われると辛い」


「うん、」


「そもそもなんでそこまで
言われなきゃいけないんだろう、」

「うん、」



“うん、”しか言わない裕太だけど、
ただただ私の言葉に耳を傾けてくれてる。







「…………………もう終わり？」




ぎゅっと抱き締めてくれてた腕が緩まって、
視線が重なると私の髪をそっと撫でた。





「………………落ち着いた」



「もっとなんかないの？
あの女！とかブス！とか」



「ふふ、女優さんにそんな事言える人いる？」



「そう？」



そろそろ戻んないと。って





「行くよ、」




瑞穂さんにかき乱された心に
裕太の手の温かさが沁みる。





「あとで帰ってから詳しく教えてよ？
ひとりにしておけない」



ぎゅ。って手を握られた。




大きな廊下に出ようとした時、





「っ、びびった」




視線の先には、





「…………タマ、」


「A………………、」




寄り添ってる太輔と葵。



太輔の視線が
裕太と私の手に落とされた。




そして、





「……………葵、行こう」






葵の手を引いて私たちの前を通りすぎた。

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