♯11 ページ12
海がIDOLiSH7に勧誘されてから、早くも1ヶ月近くが経過しようという頃。
『……。』
海は今日も変わらず、表情を憂鬱の色に染めており…
数日前からは得意のピアノを弾くのもやめて、大学の授業を休む日々が続いている。
IDOLiSH7がそこら中でミニライブを繰り返していた頃は、陸の様子を見るためだ…と、室内に篭りがちだった海にしてはめずらしく毎日のように出掛けたものだが…
何故か、ここ数週間…IDOLiSH7はミニライブも売り込みも行なっておらず…ほぼ活動休止のような状態になってしまい、海が出かけていく理由がなくなってしまったことが影響しているのだろう。
海の活動もまた、休止状態になってしまっているのである。
「海くん、こんにちは。今日は肉じゃがだよ〜今から準備するから、待っていてくれたまえ！」
『…また来たのか。ここ数日…頻度が増しているように思うが？』
「何時も言ってるでしょ？君は放置すると、不摂生な食生活になりがちだから、心配してるんだよ。あと…。」
それでも、毎日のように尊が海の部屋を訪れる為…海の基本的な日常風景は一切変わっていない。
尊という存在が、海の日常風景の一部となって常にそばにいるから。
「今日は、海くんに渡したいものもあったし。」
しかし…今日の尊は少し何時もと違っていた。
『…何だ？』
あるものを入手し…海の部屋を訪れたのである。
『…！っ…これは……。』
それが、海の現在の不安定な状態を悪化させるものと…知っていながら。
「二週間後に行われる、TRIGGERのライブチケットだよ。お爺様に取り寄せて頂いたものだ。一緒にこれを見に行こう。」
「…今、海くんは大きな運命の流れに入ろうとしている。そんな今…これは見に行くべきものだ。これを見れば…きっと、君は前に進める。」
それが、海の悲しい記憶を呼び覚ます可能性のある…荒療治になっても海の背中を押したい。
「…辛いかもしれない。でも…これは、君の親友としての願いだ。…君の時を、君のしたいことで進めて？」
海の中で止まった時間を、少しでも進めたい。
その一心で用意する覚悟を決めたのかもしれない。
そんな尊の思いを、何時もの掴み所のない言動とは一風変わった…真剣な声から海は悟り…
『…用意してくれて、ありがとう…。何時も、迷惑をかけてばかりですまない…尊。』
戸惑いを隠せない表情を引き締め…そのチケットを受け取ると、らしくもなく素直に礼を述べた。
そのクールな蒼い瞳に、静かな闘志を燃やしながら。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 165人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月(プロフ) - キャベツの芽さん» はじめまして！コメントありがとうございます！尊くんもちゃんと受け入れられていて、大好きだと言ってもらえる程だと知れて安心しました！本当にありがとうございました！ (2019年5月24日 17時) (
レス) id: f01d23ed14 (このIDを非表示/違反報告)
キャベツの芽(プロフ) - 初めまして|´-`)ﾁﾗｯ海くんも尊くんも大好きです！！これからも楽しみにしております！！ (2019年5月24日 14時) (レス) id: 270caf8b44 (このIDを非表示/違反報告)
月(プロフ) - Suiさん» コメントありがとうございます！これからも海くんのことを温かい目で見守ってくださればと思います。 (2019年3月26日 23時) (レス) id: f01d23ed14 (このIDを非表示/違反報告)
Sui - 続きがすっごい気になります!更新頑張って下さい！ (2019年3月26日 21時) (レス) id: 8fe2495ae6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
