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At that time8-1* ページ8

―病室―








「王陵さん、また娘さんがお見舞いに来て下さったわよ。良かったですね」








ベッドに横たわる男に看護師が呼びかける。
だが、男は表情すら変えず虚ろな目をするだけだった。
まるで廃人のように








「…ごめんなさいね。お父様もちゃんと分かつてて喜んで下さってますから、気を落とさないでくださいね」


「えぇ、もちろん」









お見舞いに来ていた璃華子は微笑む。






だが、看護師の言っていることが嘘なのは知っていた。
父が入院している病院には、父のような患者が多くいる。






何も気づかず、何も語らず、何も考えない。







ただの抜け殻のように生きて
やがて雪が溶けるように消えていくのだ。






こうさせてしまうのは、病名すら分かっていない伝染病のせいだ。
『安らぎ』という名の病。







人々が望んだ死のカタチ









「………これってまさか……」









一方で、とある公園にて変死体が発見された。
唐之森が言っていた、プラスティネーションで標本にされている遺体。
バラバラに切り開かれた少女の遺体。









「……今回の捜査からは外れてもらうぞ、狡噛」


「え?」


「…何でだ?ギノ」


「余計な先入観に囚われた刑事を初動捜査に加えるわけにはいかない」









あまりにも酷いと思い、朱は反論した。
聞かされた『標本事件』の話も踏まえた上で









「そんな…でもまだ標本事件と決まったわけじゃ……」









口から出た言葉に、宜野座の顔が険しくなる。
その顔にハッとするがもう時すでに遅し。









「……宿舎で待機だな」









狡噛は気にすることもなく、踵を返した。
泣きそうな朱に宜野座の声が飛んだ。
きっと気にしているようにも見えたが









「……常守監視官」


「は、はい!」


「狡噛が妙なことをしでかさないよう付きっきりで監視しろ。それが今回の君の仕事だ」









宜野座の命令通り、朱は狡噛の後を追いかけていった。

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作者名:Mermaid | 作成日時:2017年7月28日 21時

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