At that time10* ページ30
「標本事件」に似た事件を引き起こした璃華子は行方知らずになった。
『……なぜ同じ学園内の生徒ばかりを素材に選んだのかな？』
『…全寮制女子学校というこの学園の教育方針を槙島先生はどうお考えですか？』
璃華子が逃げ出した美術室で、狡噛は保存した音声を聞いていた。
「……あと一歩でしたね…王陵璃華子は既に指名手配されています。時間の問題です」
「…消えるな」
「え？」
その呟きの意味が朱には理解できなかった。
すると、宜野座が狡噛に近づいた。
「ちょっと来い。話がある」
宜野座に連れら、階段の踊り場まで来た。
呼ばれてたのに宜野座が口を開かない。
少しだけ不安になって、狡噛は尋ねた。
「……なんだよ。文句があるならハッキリ言え」
「すまなかった」
「……！」
「感情的になっていたのは俺の方だった。奴は…お前の妄想なんかじゃなかった」
「…気にするな」
ありもしない妄想と勝手に決めつけ、完全に批判していた。
「執行官」だからと言って、狡噛は意思の持った人間。少しぐらいその妄想を信じてあげればよかったのだ。
「執行官の言うことを全て真に受けてたら監視官は務まらない…そういうもんだろ？」
「だが……」
「……獲物の尻尾が鼻先をかすめたみたいな感じだ。俺は今久しぶりにとてもいい気分だよ、ギノ」
狡噛は悪い顔をしながら、あえてAの事は言わなかった。
彼女はきっと、この学園内で働く教師だ。すぐ見つかるだろうし、実際殺したという証拠にはならない。
何せ、Aは朱と同じく色相が濁りやすい体質だから。
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作者名：Mermaid | 作成日時：2017年7月28日 21時
