風音 後編 視点:綾 ページ5
その時だった。
「そこで何してる」
低い男の声。
「!」
後ろを取られた。首筋に小刀を向けられた。
(後ろは向かない方が得策か────)
「答えろ。そこで何してる?」
「...」
「ほう、黙るか」
ひゅっ。
風を切り裂く音。切った正体は見なくてもわかる。
...戦輪だ。
「...そいつを放して貰おうか。」
いつもより低い声で滝が吠える。
「わかった。」
やけに素直──────
「その代わり、」
にいくはずがない。
「
からん。地面に落ちる音。
「そうだ、そのまま────」
次の瞬間。
滝は一瞬で間合いを詰め、男の腹めがけ拳を振るった。
しかし男はそれを上回る速さで僕ごと拳を避けた。
小刀を持った腕がぼくから離れる。滝はそれを見逃さなかった。
「っ!?」
素早く男の胴体に体当たりし、手から小刀が離れ...る所で強く握りしめ、
刃を滝の背中に向けた。
「危ない!!!!」
タン!!!
力強く小刀が背中に刺さった。
音からして骨も折れただろうが、痛みなどないかのように
刺された衝撃で男の腕からぼくを剥がし、少し後方に転がる。
男の方もよろめいた。よく見ると腕から血を流していた。
体当たりの時にやったのだ。
男は舌打ちするとその場を早足で去った。
その時。
滝を抱えている腕が生温かくなった。
───────────血だ。
「滝!!!!!!!!」
止まらない。
「死んじゃやだ!!!!」
溢れてくる────────。
すると後ろから声が聞こえた。
「ここにいたか。」
振り返るとそこには──
「....七松、先輩...」
そこから先はあまり覚えていない。
滝は七松先輩が無事に送り届けた。と思う。
僕は一人とぼとぼ学園に帰った、気がする。
もうボロボロに割れた心では何も感じられなかった。
────感じたくなかった。
ザワザワザワ──────────
男の嫉妬は見苦しいわよ───────────
くすくす こそこそ あはは──────────
これは嫉妬じゃない、嫉妬なんかじゃない。
これは────────
割れた心の隙間に、冷たい風の通る音がした。
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和服教信者善法寺@保健(プロフ) - Parallel(ゾンビ)さん» (コメントありがとう私はそんなあなたが大好き) (2018年2月4日 0時) (レス) id: 108cb2d3e4 (このIDを非表示/違反報告)
Parallel(ゾンビ) - 綾滝......こころがぐしゃってされた......(とても好きですありがとうございます大好き) (2018年2月4日 0時) (レス) id: 222c42db20 (このIDを非表示/違反報告)
和服教信者善法寺@保健(プロフ) - やきもちまゆさん» わっしょい!!!! (2018年1月28日 12時) (レス) id: 108cb2d3e4 (このIDを非表示/違反報告)
やきもちまゆ - 綾滝わっしょい!!!! (2018年1月25日 23時) (レス) id: d19b1e571f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:和服教信者善法寺@保健 | 作成日時:2018年1月23日 23時