世界で一番大切にします 3 【JN】

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HW「さ、乗って。」



『あれ、車…？』



HW「僕の、ノンアルコールカクテルだから。」



『そうだったんですか！？』



HW「言ったでしょ、今日はAさんとしたい事するって。僕の隣で酔って欲しい、酔った君を車で送りたい！」








名前しか聞いたことないような超高級車の助手席に座り、ヒョヌさんが運転席へ向かう。

音もなく走り出した車は、ゆっくりと社員寮へと向かった。


何もかもが初めてで、ぽーっと夢見心地な私は気づけば自分からヒョヌさんに話しかけていた。









『…どうして…したい事がお酒飲む事、なんですか？』



HW「これからきっと思い出すでしょ、お酒飲む度僕のこと。…Aさんにとって、そのくらいの記憶には残りたいんだ。
卑怯かな、とも思ったんだけどさ。他の人に上書きされないような特別な思い出になりたかった。
個人所有のレストランで、お抱えのバーテンダーの手品を見ながら美味しいカクテル。
…社長の息子でよかったって、今日人生で1番思ったよ。」



『…確かに…もう2度と無い経験だと思います…………。』



HW「それにほら、お酒の力を借りて…今みたいにちょっと警戒心が解けたAさんも見れるかなぁって期待して。」



『……。』



HW「酔った顔も見てみたくて…僕の想像以上に可愛いくて驚いたけど。」



『……。』



HW「…僕も、君をたくさん思い出したいんだ。あのバーに行く度、この車に乗る度。だから、目に焼き付けておきたい。」









それ以降、ヒョヌさんは話さなくて。
真っ直ぐ前を見て。

急に話をやめたヒョヌさんが気になって、
私の方がたくさん、横顔を見ていたかもしれない。









HW「…無事到着、しちゃったね。」



『…ありがとうございました。」



HW「……遠回り、しても良かったんだけどね。一度ブレーキが外れると紳士に戻れなくなっちゃうから。」



『…はい。』



HW「…今日は付き合ってくれてありがとう。」









寮のエレベーターのボタンを押す。

重い扉が開いて、そこに乗り込む。








HW「…もう一つ、お願い良いかな？」



『…はい。』



HW「今日、ベッドに入って目を瞑るまで僕の事だけ考えて。」



『………はい。』









そう、返事をしたらヒョヌさんは笑った。

ユリさんに似た、私の大好きなくしゃっとした笑顔で。






HW「…ありがとう、おやすみ。」








ドアが閉まるボタンをヒョヌさんの指が押して、エレベーターが動き出した。

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