ゆうえんち【ぼくのえにっき】

大人 ページ32

深く、彼女はため息をついた。

それから、口角を上げて無理矢理笑う。


｢息子がやったことなのに当の本人は知らん顔。
夫も、過ぎたことは仕方ない。これ以上、この事に首を突っ込むなと言うんです。

彼の両親は今だに『可哀相な親』なんて言われて...｣


それから、彼女の表情が消えた。

彼女はAを見ずに、車窓越しに供えられた花を見て言った。


｢人はどうして、善悪の判断がつかなくなるのでしょうね...

虐めが悪い。虐待が悪い。

そんなの、常識じゃないですか。

でも人はそれを分かりつつも、やってしまう。


うちの息子も、きっと、そう。

分かっていながら、リュウタ君を虐めていた。


人は一長一短。十人十色。

良いところもあり、悪いところもある。

『個性』や『立場』を認めれば、きっとこんなことは起きなかったはず。


ただ、貧乏だった。
ただ、両親が不仲だった。
ただ、友達がいなかった。


人に不利な肩書きがあるだけで、弱者って見なされるんです。


更には、それを無かったことにされる。

傷を誤魔化して、権力で無かったことにする。


もうきっと、現代じゃ珍しくない。


むしろ、それが当たり前なんじゃないでしょうか？


彼は...彼も、その犠牲者。


×××は強いから、逆らえなかった。


幼いのに、よく分かってるわ。
あの子供たちは。

強者に従わなきゃいけないことを。


それは、大人も子供も同じなんですね...


でも、大人の方がずっと質が悪い。


子供の頃、何か悪いことをしたら、謝るように言われたはずなのに、それが出来てない。

あろうことか、金にものを言わせて誤魔化すなんて、よっぽど質が悪いわ。


年を追うごとに、人は幼くなっていく。
まさにその通りね。



いい大人が、私も含めて情けないですね...


本当に、情けない｣

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