月明かり ページ15
ここは、地下だ。
でも天井に窓があって、そこから月明かりが差し込んでいる。
そして、その明かりの下の質素なベッドの上に『それ』はあった。
人間?
そう勘違いしてしまうほどに、生き生きしていた。
上に並べられていた人形たちとは、比べ物にならないほど、人間らしかった。
彼は、そんな傑作のもとへ行くと、その頬を指でなぞった。
「まだ、目を覚まさないんだ。完成したばかりでな。新しい服も何着か作ってやらなきゃならないし」
愛しげに、その手をそっと取りながら、彼は続けた。
「もう、分からないんだ。かつては愛し、愛されるために人形を作っていたのに。今じゃ、『楽になりたい』って思ってる。俺が、今この子の側にいるのは、『愛されるため』で、『殺されるため』にだ」
彼は続けた。
自分は呪術の代償に、死ねなくなったと。
殺ぬための唯一の手段は、自分の作った人形に殺される事だと。
「この子が目覚めたとき、それが俺の死ぬときで、終わるときなんだ。どうせなら、愛した人の手で、終わりにしたい」
そして、この子も自分の手で、終わらせてやる。と。
「死ぬの? もったいない」
「アハハ・・・・・・そうだよな。やっと手にしたのに。でも、わがまま過ぎたよ、俺は。殺して、愛されようなんて、な。自分を全て、この子に押し付けた。この子の全てを奪って。それは望んで自分がしたことなのに」
「そしたらまた、嫌われるんじゃないの?」
何かに耐えるように、彼は傑作の手をぎゅっと握った。
「それでも、俺は愛してるんだよ。どうせ死ぬなら、殺されるなら、この子と繋がりながら、一思いに心臓を刺されたい」
僕と同じく動かない心臓に手を当てて、彼は寂しげに微笑んだ。
「きっと、死ねるよ」
「ああ、ありがとう」
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ゑごま - こんな素晴らしい作品を作ってくださり、本当にありがとうございます!!ヤンデレって良いっすね… (2021年7月17日 22時) (レス) id: 4d2c5a9f36 (このIDを非表示/違反報告)
ルヴァ子(プロフ) - ゑごまさん» こちらこそお読みいただきありがとうございました!他の作品も楽しんでいただけると幸いです。 (2021年7月16日 5時) (レス) id: feb2492136 (このIDを非表示/違反報告)
ゑごま - 全部読みきってしまった…!フロチャも全エンド回収してしまった!そして今はショタだけでなくヤンデレにも目覚めた!どうしよう、作者さん神すぎる。感謝しかないんだが。さあ、もう一周してから他の作品も見に行こう (2021年7月15日 23時) (レス) id: 4d2c5a9f36 (このIDを非表示/違反報告)
ルヴァ子(プロフ) - ピーナッツさん» こちらこそお読みいただきありがとうございました!神作品と言ってくださりありがとうございます! (2021年7月15日 21時) (レス) id: feb2492136 (このIDを非表示/違反報告)
ピーナッツ - 良すぎて...やばいです!このような神小説を作ってくださり本当感謝です!! (2021年7月15日 19時) (レス) id: 362c37f779 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルヴァ子 | 作成日時:2019年9月12日 10時