あなたのために ページ8
善逸side
Aさんは、本当に強い人だ。
精神面でも、剣技の方でも。
それに、炭治郎と同じくらい優しい音がする。
だから俺は、Aさんを悪く言う噂をまるで信じていない。
自分可愛さに姉を殺しただとか、任務の手柄を自分のものにしようとしたりだとか、そんなもの、ただの嘘だ。
誰よりも優しくて暖かい音がする人なのに、どうしてこうも嫌われているのだろう。
こんなにも、いい人なのに。
Aさんの音は、会う度に悲しみや苦しみが深くなっていて、彼女本来の音が聞こえずらい。
まあ俺も、本来の音なんて聞いたことないんだけど。
それでも優しい音がするのは分かるから、本来の音がどれだけ綺麗なのか、だいたい想像はつく。
そんな音も、俺達と話している時はいくらか和らいでいるみたいだった。
それが、何よりも嬉しかった。
俺が頼ってくださいと言った時、まるで久しく人の優しさに触れてこなかったかのように、とても嬉しそうな音をさせていた。
でもその後すぐに、まるでその感情を押し殺しているかのような軋む音がして、ぐちゃぐちゃになって、よく分からなくなって…。
その音を聞いて、尚更俺は悲しくなった。
だってさ?俺と二つしか変わらないんだぜ?そして女の子なのに、こんなに自分押し殺して生きてるなんてさ、可哀想すぎない?
いや、可哀想なんてもんじゃないよ。この立場が俺だったら死んでるくらいだよ。
それくらい、辛いはずなのに。
俺達にはまったく頼ろうとしてくれないのは、優しさからだってことはわかってる。
でも、それでも俺達だって何かしてあげたいじゃん?
ただでさえ鬼殺隊に身を投じていて、この世は辛いことばかりなのに、こんなのあんまりじゃないか。
「…なあ、二人とも。」
沈黙が続いていた中で、それを最初に破ったのは炭治郎だった。
こいつもさっきから悶々と考えていたから、きっとAさんのことだろう。
「Aさんのことについて、本人から一度聞いた方がいいと思うんだ。」
ほらな。やっぱりだ。
その言葉に、俺と伊之助も静かに頷く。
「俺さ、Aさんがお面してるのって、何か並々ならぬワケがあるんだと思うんだよね。あと、陽の光が苦手なこととかもさ。」
「あいつが鬼だなんて、何馬鹿なこと言ってんだろうな。気配とか全然違えじゃねえか。」
伊之助の言う通りだ。あの人は鬼じゃない。
まあ、その点含めて、Aさんが戻って来たら聞いてみよう。
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アマリス(プロフ) - この夢主、魔法少女になったら真っ先に魔女化するな。で、人間体は死んで、魂ごと消えるあれですけど、まあそうなればみんな幸せなんでしょうね。夢主は魂ごと消滅するんですから。本当にそうなったら、どうなるんでしょうね。 (2022年5月22日 20時) (レス) id: 7d0074fb6d (このIDを非表示/違反報告)
ふじか(プロフ) - 更新楽しみに待っています! (2021年9月29日 10時) (レス) id: ae671ca5ff (このIDを非表示/違反報告)
*つむり* - すごく面白いです。小説の書き方とかも、すごく参考になります!続きが気になります……といったらプレッシャーになるかもしれませんが、応援してますので、気を詰めずに自分のペースで頑張ってください! (2021年5月3日 10時) (レス) id: a3e5e92948 (このIDを非表示/違反報告)
リタ - とても面白かったです! (2021年2月25日 19時) (レス) id: 800a931bab (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - 下に同じくもっと伸びるべきだと思います!ゆっくりで良いので更新頑張ってください!体調にも気をつけてください! (2021年1月7日 18時) (レス) id: bff8d73ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年11月14日 12時