とても優しい人 ページ13
それから少しだけ話しをすることになり、善逸達を起こさないよう、静かに会話を続けた。
「そういえば華月さんは、どうしてあの場にいなかったんですか?」
『私は少し用がありまして、御館様から内容だけお聞きしたものの、その場には不参加という形になってしまったんです。
基本柱は全員参加なのですが、どうしても外せなかったもので…。』
そう言った華月さんからは、とても申し訳なさそうな匂いがする。
……本当に、この人はあの噂がたっている人なのだろうか。
噂とはかけ離れた人柄に、雰囲気。
きっと根も葉もない噂なのだろうけれど、どうしてあんなに酷く言われているのか。
こんなにも、いい人なのに。
『それにしても、竈門くんは凄いですね。』
「え?」
『よくここまで、妹さんを守りながら折れずに、そして諦めず戦ってこれたものです。
それに君は、とても優しい。
だから鬼にも慈悲の心を持っている。
私だったら絶望に打ちひしがれ、鬼殺隊に入ることもしなかったと思います。
そしてきっと、鬼を憎み続け、許すことすら出来ないでしょう。
だから君は、このことを誇っていいと思いますよ。』
優しい声で、華月さんはまた俺の頭を撫でながらそう言った。
華月さんはお面で表情が見えないけれど、優しく温かい人なのだということは、よく伝わってくる。
それと同時に、何を話していても華月さんの匂いには、悲しみの匂いが混じっているのが分かる。
口から発せられる優しい声と、悲しそうな匂いに、また俺は泣きそうになってしまった。
すると、あらあらと言って華月さんは俺の頬に手を添えた。
『男の子がそう何度も泣くものじゃありませんよ。』
そう言って、俺の目元をそっと撫でる。
その手はやっぱり優しくて、思わず涙がこぼれそうになるのをぐっとこらえた。
「すみません。あまりにも華月さんが優しくてつい。でも!長男なので、これ以上は泣きません!」
俺の言葉を聞いた華月さんからは、とても驚いたような匂いがした。
そして、少し嬉しそうな匂いも。
『ですが、泣きたい時は我慢しては駄目ですからね。』
華月さんはそう言うと、また来た時のように窓の淵に座る。
『それではまた、竈門くん。くれぐれも、私が来たことは胡蝶様にはご内密に。嫌な思いをさせてしまうので。
…竈門くん。妹さんと二人で、ちゃんと幸せになってくださいね。』
そう言って、華月さんは姿を消した。
とても悲しい匂いを残して。
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アマリス(プロフ) - この夢主、魔法少女になったら真っ先に魔女化するな。で、人間体は死んで、魂ごと消えるあれですけど、まあそうなればみんな幸せなんでしょうね。夢主は魂ごと消滅するんですから。本当にそうなったら、どうなるんでしょうね。 (2022年5月22日 20時) (レス) id: 7d0074fb6d (このIDを非表示/違反報告)
ふじか(プロフ) - 更新楽しみに待っています! (2021年9月29日 10時) (レス) id: ae671ca5ff (このIDを非表示/違反報告)
*つむり* - すごく面白いです。小説の書き方とかも、すごく参考になります!続きが気になります……といったらプレッシャーになるかもしれませんが、応援してますので、気を詰めずに自分のペースで頑張ってください! (2021年5月3日 10時) (レス) id: a3e5e92948 (このIDを非表示/違反報告)
リタ - とても面白かったです! (2021年2月25日 19時) (レス) id: 800a931bab (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - 下に同じくもっと伸びるべきだと思います!ゆっくりで良いので更新頑張ってください!体調にも気をつけてください! (2021年1月7日 18時) (レス) id: bff8d73ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年11月14日 12時