月の綺麗な夜に ページ12
那田蜘蛛山の任務から少し経ったある日。
布団の中で寝ようと目を閉じると、窓がひとりでに開いて風がふわりと入り込み、嗅いだことのない人の匂いがした。
誰だろうかと思い、目を開けて窓の方を見やる。
そこには狐のお面をつけた白髪の女の人が、綺麗な月を背に、窓の淵に腰を下ろしていた。
その人は俺が体を起こすと、静かに声を発した。
『こんばんは。夜分遅くにすみません。私は夜柱の華月Aです。君は竈門炭治郎くんですか?』
「え、あ、はい。そうです。」
夜柱と聞いて、噂を知っていた俺は少し身構えたが、彼女から漂うどこまでも優しい匂いにそれをやめた。
この人は、噂で話されているような人ではない。きっと、ものすごく良い人だ。
百聞は一見にしかず、と言うしな。
『先日の君の裁判の時、いてあげられなくて申し訳ないです。話によると、妹さんが不死川様に刺され、君は伊黒様に肺を圧迫されたとか。
その時の怪我などはもう大丈夫ですか?』
「はい!しのぶさんやここの人達のおかげで、すっかり良くなってきました!禰豆子も今は寝てますが、大丈夫です!」
『それは良かったです!』
そう言った華月さんからは、とても安心したような匂いがした。
当たり前のように、俺や禰豆子の心配をしてくれた。この人は、鬼である禰豆子を認めてくれているのだろうか。
「あの、華月さんは俺達のことをどう思っているんですか?華月さんはあの場にいなかったので、よく分からなくて。」
俺がそう聞くと、華月さんはそっと窓の淵から降り立ち、俺の頭にそっと触れた。
『私は君達兄妹を、鬼殺隊の一員として認めます。元より私は、君達を殺すつもりなど微塵もありませんでしたよ。
人を喰わない鬼は前例にないですが、いるのなら素晴らしいことです。
君も、君の妹さんも、とてもよく頑張りましたね。』
とても優しい声色でそう言いながら、俺の頭を撫でてくれる。
その手つきは、どこか母ちゃんのものに似ていた。
思わず、ポロリと涙がこぼれる。
この人は、本当に俺達のことを思ってくれている。まったく嘘のない、どこまでも優しい匂いだけが、俺の鼻をついた。
『他の柱である皆様は、妹さんを殺さないということに反対していたと思います。ですが大丈夫。
柱である皆様は、優しい人達ですから。
きっと、君の妹さんを認めて下さりますよ。』
俺の涙を拭いながら、そう言った華月さんはお面の下で微笑んでいるような気がした。
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アマリス(プロフ) - この夢主、魔法少女になったら真っ先に魔女化するな。で、人間体は死んで、魂ごと消えるあれですけど、まあそうなればみんな幸せなんでしょうね。夢主は魂ごと消滅するんですから。本当にそうなったら、どうなるんでしょうね。 (2022年5月22日 20時) (レス) id: 7d0074fb6d (このIDを非表示/違反報告)
ふじか(プロフ) - 更新楽しみに待っています! (2021年9月29日 10時) (レス) id: ae671ca5ff (このIDを非表示/違反報告)
*つむり* - すごく面白いです。小説の書き方とかも、すごく参考になります!続きが気になります……といったらプレッシャーになるかもしれませんが、応援してますので、気を詰めずに自分のペースで頑張ってください! (2021年5月3日 10時) (レス) id: a3e5e92948 (このIDを非表示/違反報告)
リタ - とても面白かったです! (2021年2月25日 19時) (レス) id: 800a931bab (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - 下に同じくもっと伸びるべきだと思います!ゆっくりで良いので更新頑張ってください!体調にも気をつけてください! (2021年1月7日 18時) (レス) id: bff8d73ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年11月14日 12時