36 お気に召すまま ページ37
昨日、勿論敵は見つかる筈もなく、私と中原くんはあれから大して会話もせず別れた。私は香山さん宅に、中原くんは何処かへ行ってしまった。一応私は補佐だったからある程度の中原くんの動向は知っていたけれど、今の私は一切知らされていない。
そういう事、なんだろう。
どこか憂鬱な気持ちのまま、夏本番といった感じの蝉時雨に耳を澄ませつつ学校へ向かう。忘れてしまった課題を取りに、ついでに相澤さんに勉強を教えてもらう為だ。課外補講とも言う、死ぬ。
「あっつー。」
制汗剤とボディシートで身だしなみを整え、冷房の効いた校内へと入る。使われているところにしか冷房はないらしく私達の教室のある階は稼働していなかった。
お目当ての課題を見つけ、階段を降りる。カンカンカンカン、心地よいリズムを繰り返す。
「あ、心操くんやほー。」
すると、其処には階段を上ってきていた心操くんがいた。段ボールと、よくわからない観葉植物を持っている。
「何してんの？」
「忘れ物取りに来たの。」
そして私はふと、心操くんの身体が大きくなっていることに気づく。
「なんか鍛えたの？」
「・・・まあ、そんなとこ。」
どこか照れ臭そうな心操くん。その努力は誉められるべきものであって、恥ずべきものではないとは思うけどそれは私の感性なので黙っておくことにした。
階段を私は下り、心操くんと同じ段へ。心操くんは不思議そうに私を見る。
「俺なんかした？」
「ううん、何にも。」
ちょっとした出来心と、憂いを帯びた心に動かされて私は思わず口走る。
「心操くんさ。」
「うん。何？」
「もし私が人殺したことありますけどヒーローやりたいですッて言ったとしたらどうする？」
其はおかしい、裁かれるべきだと私はいってほしかった。然し心操くんは少し考えて、私の予想の斜め上をいったのだ。
「別にいいんじゃない？夢見ることも職業選ぶことも自由なんだし。」
だから其れが仮に本当だとしても、と心操くんは仮定して。
「平はヒーロー、目指してよ。」
俺は自力でヒーロー科に編入してみせるから、と心操くんは笑った。その言い方は、ヒーロー科をやめるなと言いたげで。
「どうかなァ、年上の御曹司と駆け落ちしちゃうかも。」
「平に限って其れはない。」
「何でさ。」
じゃ、と私たちは別れていく。去り際に心操くんがおいていった一言は、耳にこびりついたままだ。
「林間合宿頑張れ。」
なんて、言われなくてもわかっている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 330人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アヤ(プロフ) - ペンギン太郎さん» ありがとうございます！平ちゃん可愛い、久々に言われました…！無理せずしっかり頑張ります！ (2018年12月27日 18時) (
レス) id: 16b8101627 (このIDを非表示/違反報告)
ペンギン太郎 - すごい！この作品！とても好き！すんごく面白いです！！中也さんがかっこよくって平ちゃんが可愛くて…もう…もう！応援してます！無理しないで頑張ってください！ (2018年12月27日 17時) (レス) id: a451b06430 (このIDを非表示/違反報告)
アヤ(プロフ) - ヒバリさん» ありがとうございます！かっこいいと言っていただけると安心します…かっこよくかけてるか不安になるんですよねー。これからも更新頑張ります！ (2018年12月23日 20時) (レス) id: 16b8101627 (このIDを非表示/違反報告)
ヒバリ - ちゅーやさんちょっとイケメンすぎやしません？アヤさんのちゅーやさんかっこいいです！これからも更新楽しみにしてまふ。 (2018年12月23日 14時) (レス) id: 60878f7a2d (このIDを非表示/違反報告)
アヤ(プロフ) - 本の虫さん» ありがとうございます！完全な個人のプライベートで番外編やってすいません、これからも頑張ります！ (2018年11月6日 0時) (レス) id: 16b8101627 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
