ボスとJKの、その後。 (ページ6)

今日:1,028 hit、昨日:2,201 hit、合計:44,588 hit

入学式ページ6

窓の外には、春の光。

『……今日から、大学生』

小さくつぶやいて、深呼吸。
緊張とわくわくがまざった気持ちを抱えたまま、私は朝の支度を始めた。

炊きたてのご飯と、お味噌汁と、目玉焼き。
「一人暮らしも悪くないかも」なんて思いながら、ちゃんと朝ごはんを食べて──

鏡の前に立った。

白いブラウスにネイビーのセットアップ。
初めて着るスーツは、なんだか背筋が自然と伸びる気がした。

髪はゆるく巻いて、メイクも丁寧に。
いつもと違う自分に、少しだけ照れながらも──

『……よし、できた』

バッグを持って、玄関を出る。
見慣れない道を進むのは少し不安だったけど、春の風がそれをやわらげてくれる気がした。

＊＊＊

大学の門前は、人、人、人。

みんなスーツ姿で、緊張したような、期待にあふれたような顔をしていて──
私もその中のひとりなんだと思ったら、ちょっとだけ不思議な気持ちになった。

そんなとき。

「あの、すみません！その学部、○○学部ですか？」

『え？あ、はい……たぶん、同じパンフレット持ってます！』

「あー！よかった！友達いなくて焦ってたんです！」

そう言って笑ったのは、目がぱっちりした明るい子。
緊張していたはずなのに、彼女の笑顔を見た瞬間、自然と私も笑っていた。

『私は白岩Aって言います。』

「私は桃子！石田桃子っていいます！」

『桃子ちゃん、よろしくね！』

「うん！よろしく！一緒に入ろ！」

自然と並んで歩き出していた。
知らない場所も、誰かとなら少しだけ安心できる。

＊＊＊

式が終わって、門の前に出たときには、さっきよりもずっとリラックスしていた。

「記念写真撮ろ〜！」

『うん！せっかくだもんね』

スマホを取り出して、門をバックに並んでパシャリ。

そのまま画像フォルダを開いて、瑠姫くんと景瑚さんに送信した。

『無事に入学式終わりました！
スーツ、似合ってるかな？初めての大学生！』

送ってからスマホを抱えたまま、ちょっとだけ笑う。

これからの毎日が、少しずつ広がっていく予感がした。